表題番号:2011A-840
日付:2012/04/23
研究課題地方分権改革と市町村費負担教職員任用の動向に関する実証的研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 教育・総合科学学術院 | 助手 | 阿内 春生 |
- 研究成果概要
- 本研究は公立義務教育学校における学級編制及び教職員定数の制度改革について、分権改革に先行する事例に独自の分析枠組み(「前史的事例」という)を設定し、独自の視点から分権改革の再評価を企図するものである。この分野における分権改革は国から地方への権限委譲という一方向的なものだけではなく、市町村の独自政策を追認、あるいは後追いした制度設計であったことを理論的、実証的に明らかにすることを目的とするものであった。本研究では、その中でも市町村費負担教職員雇用事例について資料収集やヒアリング調査など質的研究の手法を用い、情報を収集、分析することを主な課題として取り組んだ。
本年度の研究では、長野県長野市、茨城県旧総和町において資料収集とヒアリング調査を実施した。長野県長野市では『長野県学事職員録』を収集し、昭和30年代から現在までに至る長野県東部(東信)の学校関係職員を示す資料を得ることができた。長野県の東信地域は南佐久郡小海町の事例の他にも同時期に新聞紙上などにおいて議論となった南佐久郡川上村も含み、この地域における市町村費負担教職員の任用状況について知る貴重な資料を得ることができた。
また、茨城県旧総和町の事例に関しては、同町における町費非常勤講師の雇用事例について調査した。当時同町町長の職にあったA氏へのヒアリングの他、現在の茨城県古河市議会事務局において総和町議会、町議会文教委員会の議事録を収集し、事例導入の状況を調査した。その結果、旧総和町においては、議会を舞台とした政治的駆け引きの結果非常勤講師の雇用が選択されていたことを伺い知ることができた。
これら、長野県長野市、茨城県旧総和町における調査の結果は今後関連学会での発表や論文投稿を通じて発信していく予定である。
また、本年度は現行の県費負担教職員制度において、人事権を持つ都道府県教育委員会及び、都道府県教育委員会の出先機関としての地方教育事務所について調査を行った。地方教育事務所は都道府県が任意に設置する出先機関であり、法令に定めがないため、各都道府県では設置していない場合、設置されていても人事事務は行っていない場合など多様である。地方教育事務所は県費負担教職員の人事事務を直接取り扱う箇所であり、市町村における人事事務に最も近い都道府県教育委員会の機関である。この地方教育事務所に関して市町村合併や行財政改革、地方分権改革を通じてどのような業務変化があったのかを明らかにすることを目的として取り組んだ。この課題に関しては、2011年8月の日本教育学会大会においてその成果を報告した。