表題番号:2011A-818 日付:2012/04/13
研究課題会社関係訴訟法の理論的構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 教授 松村 和德
研究成果概要
平成17年の会社法においては、これまで十分に整備されてきなかった会社に関する訴訟手続に関する事項の新たな規律・整備が試みられた。本研究は、それらの規律につき民事訴訟法の観点から評価、検討することを目的としたものである。検討項目は多数あるが、当該年度の本研究において主たる研究対象としたのは、(1)株式共有における場合における会社関係訴訟の問題、(2)株主総会決議の瑕疵に関する訴訟、(3)株主代表訴訟である。
(1)においては、とくに、企業承継で見受けられる株式共有の場合における原告適格の問題を取り上げた。会社法106条の解釈論にも関わるが、判例(最判平成2年12月4日民集44巻9号1165頁、最判平成3年2月19日判タ761号160頁、最判平成9年1月28日判時1599号139頁、大阪高判平成20年11月28日判時2037号37頁など)や会社法学の通説による原告適格要件の加重化を、会社関係訴訟における原告適格論、通常の民事訴訟における当事者適格論、共有関係訴訟における当事者適格論から分析、検討し、判例・通説の考え方は民事訴訟法理論の観点から必ずしも正当化できるものではないことを明らかにした。
(2)においては、株主総会決議取消しの訴えを題材に、訴えの利益、原告適格の消滅の問題、また取消事由の追加主張の問題(最判昭和54年11月16日判決民集33巻7号709頁、最判昭和51年12月24日判決民集30巻11号1076頁、最判平成5年12月16日民集47巻10号5423頁などを取り上げて)を検討した。とくに、後者においては、判例の立場に疑問を提示し、民事訴訟法理論からはその正当化の点で疑念が生じることを明らかにした。
また、(3)については、複数の問題があるが、とくに、和解、訴訟参加、強制執行を取り上げて検討した。和解では、会社法上の規定の正当性、和解に対する対抗方法等を検討した。訴訟参加ではとくに会社の取締役(被告)側への補助参加を認めた立法の正当性を検討した。いずれの問題においても、立法的解決方法の理論的根拠で問題があることを明らかにした。また、強制執行については、原告株主の強制執行申立ての理論的根拠づけを検討した。