表題番号:2011A-817 日付:2012/03/26
研究課題ドイツにおける企業買収法制の形成に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 教授 福島 洋尚
研究成果概要
 本研究は、日本の会社法、資本市場法の延長線上にある企業結合法制・企業買収法制を検討する際の基礎となる外国法制の調査、資料整理、基礎研究を目的とするものである。特に企業買収の局面においては、近年日本においてもその解釈の進展が目覚しいものがあるが、その際、外国法制の中でも、ドイツ、EUにおける企業買収法制は邦文での基礎資料が乏しいためか、十分に参照されていないという問題があるからである。
 これに基づき、今年度は外国法制の中でも、ドイツ、EUにおける企業買収法制の基礎研究、基礎理論について、資料の整理、調査を行うこととし、基本となる体系書、注釈書などの文献購入と、雑誌論文、記念論文集に所収されている重要文献の収集を行うとともに、ドイツ、EUの基本的立場を探るために、立法関係資料を跡付けていく作業を行った。
 ドイツにおいては、2001年において、企業買収に関する会社法、資本市場法の横断的立法である「企業買収法」を単行法として制定するとともに、関連する株式法(株式会社法)と組織変更法(合併、会社分割等の基本法)の一部改正を行い、2002年に施行されている。その後、EUの第13指令(企業買収指令)の策定により、国内法化の手続きのために2006年に企業買収法の改正を行い、移行期間を経て現在にいたっている。
 この間、企業買収に直面した経営陣の行為規制に関する改正をめぐる議論や、買収に伴う少数株主の締め出し制度に関する改正など、日本において多くの裁判例で争われている問題についての立法的解決が試みられており、日本における同様の問題の解決に示唆を与える議論も多い。そのため、本研究においても、本年度の調査によって、各論的問題を扱うための示唆を得ることができたものと考えられる。今後1年から2年の間に、立法過程における議論を検討するとともに、日本でも問題となっている各論的問題の一つである、企業買収法制における少数株主の締め出しの問題について、会社法上の制度と資本市場法(日本における金融商品取引法)上の制度が重複しているドイツの制度設計について検討する論文を公表したいと考えている。