表題番号:2011A-809 日付:2012/09/20
研究課題地方債の市場法的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 准教授 若林 泰伸
研究成果概要
 2012年9月現在では、研究成果と呼ぶことができるほどの具体的な成果はほとんどない。
 2011年度から取り組んでいるのは、主として、文献収集と基礎的な知識の蓄積である。
 文献収集としては、邦語文献とアメリカ法の文献の双方の収集に取り組んでいる。前者について、法律学の文献では、金融商品取引法ないし旧証券取引法関係の文献はほとんど存在しないため、主として財政法や行政法の文献を集めているところである。これらの法律分や以外では、地方公共団体の倒産に関する文献を若干収集した。法律学以外の文献では、金融論・証券経済学関係の文献や財政学の文献を収集しているほか、国や地方公共団体の財務情報の公開に関連して、公会計関係の文献を収集しているところである。また、アメリカ法の文献としては、公的な主体が発行する有価証券に関する市場法的規制について包括的に扱っている実務書の第3版が出版されていたので、当該文献を購入した(Robert A. Fippinger, The Securities Law of Public Finance(3d ed. Practicing Law Institute 2011))。本格的な研究のためには、アメリカの判例とローレビューの収集に取り組む必要があると考えているが、日本法の問題意識を成熟させる必要があるため、そこまでには至っていない。
 基礎的な知識の蓄積については、地方財政制度や地方債制度関連のものを中心に行っているところであるが、公会計制度や国債制度についても、関心のあるところから文献を読んで研究を深めているところである。
 前述の通り、研究成果と呼ぶことができるものはほとんどないが、これまでの研究の概要を、自分が大学院法学研究科で担当している授業(資本市場法研究(2))で報告した。内容としては、公共債の市場法的研究に取り組んでいる理由、公共債の金融商品取引法上の位置づけ、地方債に関するアメリカ証券規制における条文の概要、地方債の財政法上の位置づけ、地方債の発行方法、許可制と協議制などである。
 今後は、国債については、日本版プライマリー・ディーラー制度(国債市場特別参加者制度)の法的意義について研究したいと考えている。また、地方債については、公会計や財務報告制度について研究を深め、虚偽の情報開示とその法執行について、アメリカ法の研究をしていきたいと考えている。