表題番号:2011A-804 日付:2012/04/13
研究課題利害関係を持つ審査員団が勝者を選ぶ際の持ち回り決議メカニズムの有効性
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 助手 安達 剛
研究成果概要
本研究は、候補者との間に利害関係を持つ審査員達(ただしその利害関係は客観的には明らかでない)によって審査団が構成されているようなコンテストにおいて、社会的に望ましいランキングが自発的に選ばれるような審査団内での「ランキング決め」の方法(=メカニズム)として、各ランキングと各候補者についてその候補者がそのランキングにふさわしいか否かを審査員達が逐次的に回答していく“持ち回り決議型メカニズム”を提案するものであった。報告者は以下に挙げた2回の国際学会、1回の国内学会、及び1回の国際ワークショップにおいてその研究成果の発表を行った。それらにおける参加者及び討論者との議論を通じて、(1)本研究の成果の応用範囲が体育競技や工芸品の品評会といった狭義のコンテストの枠組みに留まらず、政策目標の順位付けや選挙などの幅広い社会的意思決定に利用できるものであること、(2)提案されたメカニズムでは特定の審査員の回答が拒否権的な効力を持つことを認めているが、数学的な設定を僅かに変えることで全審査員の回答の多数決という形式を持つより不公平感の少ないメカニズムに変更できること、(3)提案されているメカニズムの自然さ、単純さについて直観的に訴えるのではなく公理的に特徴づけを行うことができれば、より望ましい研究となること、などの有益なコメントが得られた。特に(2)の設定の変更については追加的な研究を通じて、不公平感の縮小という心理的なメリットに留まらず、ゲームに関する共通知識について弱い仮定を課した場合でも望ましいランキングが選ばれるという意味で、均衡の頑健性を向上させるという理論的なメリットがあることも明らかになった。実験による検証についても、上記の設定の変更に伴うメカニズムの見直しに伴い最終的に中断に至ったものの、実験経済学者の竹内あい氏(現・立命館大学)のアドバイスを得つつ、実験目的の明確化、実験で用いるモデルの決定、メカニズム見直しによる影響も含めた予想される結果についての解釈、といった基本的な実験デザインを完了し、翌年以降の研究に向けた資源とすることができた。