表題番号:2011A-801 日付:2012/03/29
研究課題「貿易のための援助」と経済成長の理論的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 教授 内藤 巧
研究成果概要
 この研究の目的は,貿易のための援助が貿易を通じてどのように援助受入国及び供与国の経済成長率や厚生に影響を与えるのかを理論的に明らかにすることであった.具体的には,受入国が小国でなく,交易条件が世界市場で内生的に決められる場合,貿易のための援助が貿易費用及び交易条件の変化を通じて各国の成長経路に与える影響を分析した.また,そこで開発された2国内生成長モデルでは外生的であった貿易パターンを内生化したモデルを構築し,ある国の一方的貿易自由化がその国と貿易相手国に与える影響を調べた.
 論文"Aid for trade and global growth"では,共通の定常成長率と大域的安定性を伴う2国内生成長モデルを定式化し,貿易のための援助と世界的な成長率について2つの結果を得た.第一に,援助供与国の援助/GDP比率の永続的な増加は,それが援助受入国の輸送費を供与国のそれの上昇率より大きい率で低めるとき,そしてそのときにのみ,定常成長率を高める.第二に,ある尤もらしい条件の下で,成長率を最大化する援助/GDP比率が内点として存在する.この論文は現在投稿中である.
 論文"A Ricardian model of trade and growth with endogenous trade status"では,貿易ステータスが内生的な貿易と内生成長の2国連続財リカード・モデルを定式化した.均斉成長経路の存在,一意性,大域的安定性を証明した後で,以下のことを示した.古い均斉成長経路に比べて,任意の1国の貿易費用の永続的な低下は(i)全ての国,全ての時点で資本の成長率を高める(ii)全ての国,全ての時点で輸入財の範囲と輸出財の範囲の両方を増やす(iii)全ての国で厚生を高める.これらの理論的予測は実証的証拠と定性的に一致している.この論文はJournal of International Economicsに近刊予定である.