表題番号:2011A-721
日付:2012/04/10
研究課題生産の復旧/操業を阻害する要因調査と対策-リスクマネジメント・ロジスティクス-
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 | 教授 | 吉本 一穂 |
(連携研究者) | 理工学術院 | 次席研究員 | 鈴木広人 |
(連携研究者) | 理工学術院 | 助手 | 大森俊一 |
(連携研究者) | 理工学術院 | 助手 | 崔 漢龍 |
- 研究成果概要
- テーマ:生産の復旧/操業を阻害する要因調査と対策-リスクマネジメント・ロジスティクス-
創造理工学部 経営システム工学科 吉本一穂
<目的> 生産現場の被災実態、特に生産復旧の阻害要因の実地調査を踏まえ、震災に対する
リスクマネジメントの知見を得る事を目的とする。
震災発生後、製造現場は直接的な被害のみならず、関連企業の被災によって生産中断を余儀なくされた。その実態を調査し、生産の復旧/操業を阻害する要因を把握、リスクマネジメント・クライシスマネジメントという観点より纏めた。
主たる調査先企業とテーマおよび調査概要はは次のごとくである。
㈱日立製作所 本社 BCP(Business Continuity Planning:事業継続計画)の見直しについて
㈱日立製作所 水戸工場 被害状況と生産再開までの阻害要因調査 情報網の断絶/復旧部品の在庫切れ
カバヤ食品 関東工場 製造現場配管被災と食品衛生法、HASEP(Hazard Analysis and Critical Control Point)基準回復
までの作業
㈱ツムラ 土浦工場 資材(包材)工場の被災の影響。分散配置工場/倉庫の効果。ロジスティクスの阻害要因 BCP見直
しと医薬品在庫計画のあり方
㈱川俣精機 福島工場 3階建て工場の壊滅的打撃と新工場設計
㈱日産 エンジン制御電子部品のICパッケージ工場被災による自動車業界全体の組立ラインストップに対す
る企業の壁を超えた復旧作業とエッチング原版洗浄能力のネック
㈱ダイフク BCPによるメンテナンス部品在庫3か月の有効性 現地復旧の人員確保の問題点
㈱東芝/西芝 製造分担 BCPの見直し
(財) 日本IE教会 メンバー会社からの情報収集
以上のような調査を経て、生産の復旧/操業を阻害する要因調査を行い、それを生産現場の問題点整理に用いる”対象”と”観点”マトリックスを用いて整理した。その内容は、「復興研究ポスター」として公開した。
ポスターセッションで示した概要は次の如くである。
1.リスクマネジメント(LM) と クライシスマネジメント(CM)
LM、CM の狙いの違いを明らかにし、BCPとの関連を示した。
*リスクマネジメント
“ハザード(損失の拡大につながる要因)”に対する対応を誤ると“ペリル(事故)”が発生し、ロス
(損失):リスクが生ずる。
震災によって引き起こされた“経済的損失(リスク)”は、
軟弱な地盤というハザードに十分な対応をしていないと
液状化による建物の損壊というぺリルを引き起こす。
リスクマネジメントは、ハザードの的確な把握とぺリルの発生を未然に防ぐ、『事前の行為』
*クライシスマネジメント
発生してしまったリスク(損失)の素早いリカバリー、即ち、『事後の行為』
2.生産復旧/操業を阻害する要因調査
前出の企業において調査を行った。その一部を示す。
エキス抽出工程 停電により工程中断:エキス排出できず⇒排出処理、殺菌など19日
配管ずれ発生⇒配管手配、修理工事、試運転など23日
乾燥・粉化工程 停電により工程中断:壁面焼付き ⇒壁面補修、試運転など41日
包装工程 設備のダメージはなし⇒包材メーカが被災、復旧/再生産に46日
この例では、自社の被災による生産回復に要した日数より、包装副資材の調達がストップしたことが生産復旧の大きな阻害要因と
なっていた。その後のBCPの見直しにおいて、BOM(部品展開表)を元に、震災後に調達可能となった日数を調査、緊急時をにらん
だ適正在庫の決定を行った。
以上のような調査/解析を行い、今回の震災を例にリスクマネジメントの知見、具体的にはBCP(Business Continuity Planning:事業継続計画)の見直しについて企業における具体的アクションを把握した。