表題番号:2011A-717 日付:2012/03/31
研究課題再生像提示に向けた昭和三陸津波復興計画の検証-計画的高所移転と自然発生的低所移転-
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 後藤 春彦
(連携研究者) 理工学術院 助教 佐藤 宏亮
研究成果概要
 東日本大震災で被災した中小漁村を対象に、復元力のある復興まちづくりを進めていくことを目標として研究を進めた。岩手県山田町の2つの漁村(大沢集落、大浦集落)を対象として、震災前の被災地での暮らしの姿を住民へのヒアリング調査を通して描き出すとともに、幾度となく三陸沿岸地域を襲ってきた津波災害に対して、その教訓を津波防災に対して十分に活かし得なかった課題を整理した。そのうえで、(a)計画的高所移転(b)自然発生的低所移転(c)計画的低地オープンスペース(d)自然系利用などに着目しながら分析し、復興に向けた集落再生の方法を提示した。
具体的な研究の方法は以下の通りである。
1)土地と暮らしの来歴を丁寧に読み解く
 縄文海進以降の地形風土の来歴を把握するとともに、地域住民へのヒアリング調査を通して、過去の津波災害以後の土地利用の変遷や、現在に至る暮らしの姿の変容を調べた。その結果を地図上に整理することで、土地利用と人間居住の文化的な蓄積との関係を読み解いた。
2)過去の津波災害の教訓を活かし得なかった課題を整理する
 昭和三陸地震やチリ津波などの過去の津波災害における被害の状況や、その後の市街地形成のプロセスを詳細に把握しながら、漁村集落における海沿いの土地利用の必然性や課題を把握し、集落再生に向けた与条件を整理した。
3)復興のロードマップを提示する
 生活者の視点に立って、復興の10年間のロードマップの中でどのような選択肢があり、それぞれの選択がどのような課題を孕み、結果としてどのような生活像が実現できるのかを検証した。復興計画を地域住民に対して説明するために、図や模型などを通じてわかりやすく「行政素案」を翻訳し、計画のアセスメントを行った。
4)実現すべき生活像を提示する
 人口減少を背景に、これまでのような大規模工法に頼るまちづくりからの脱却を目指し、人間と環境とが共生できる望ましい生活像を明確にし、集落再生の具体的な方法を提示した。