表題番号:2011A-701 日付:2012/04/02
研究課題広域災害時における遠隔自治体からの人的支援のあり方に関する調査研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 教授 稲継 裕昭
研究成果概要
 阪神淡路大震災以降、各地で取り組まれてきた市町村の地域防災計画では、自主防災組織を第一に考え、その補完措置として市町村役場による公助があり、その上で近隣市町村同士の連携や、市町村と県との連携を打ち出してきた。しかし、2011年3月11日に発生した東日本大震災では、町役場や市役所自体が流されたり、地域コミュニティそのものが全て津波にのみこまれてしまった地域も少なくない。地域の絆だけでは、このようなメガ災害には、とても対応しきれないことが明らかになった。
 このような状況下で、全国各地の消防・警察や、自治体職員が数多く被災地域に派遣された。本研究では、自治体、とりわけ遠隔自治体からの人的支援の実態と自治体間連携支援の課題について考察を行った。
 研究の進め方としては、主として関西の自治体の職員(うち、半数は被災地への派遣を経験)と研究会を重ね、遠隔自治体からの人的支援の現状と、法的な限界について検討を行った。その結果、得られた知見をもとに、早稲田大学出版の震災ブックレットのシリーズの1冊として成果を報告することができた。
 成果報告となる出版書の各章では、東日本大震災等これまでの大規模震災の事例から避難所運営に係る課題の抽出、避難所の需給マッチングシステムの構築などについて提言を行うとともに、遠隔自治体から派遣された職種ごとの傾向を分析して、時期によるニーズの変化をまとめた。また、阪神淡路大震災を経験した神戸市の取り組み、派遣事例について紹介し、「神戸市職員震災バンク」について触れ、全国的な人材バンクシステムの必要性を訴えている。さらに、災害時の医療体制について解説するとともに、災害現場での医療者や自治体職員の使命について述べた。そして、福井県、関西広域連合、京都府、岐阜県からの東北各地域への人的支援の状況について、その実態や経過とうについて記述的分析を行った。
 本研究成果が、今後の広域災害への備えの一助となることを祈念する。