表題番号:2011A-601 日付:2013/04/11
研究課題日本における医師のキャリア形成と病院の人的資源管理に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 教授 村上 由紀子
研究成果概要
日本では高齢化が進み、医療サービスの重要性とそれへの関心が高まっているが、医療機関の人材育成、人的資源管理、労働問題などに関する学術的研究はほとんど行われてこなかった。そこで、本研究では医療従事者の労働問題を的確につきとめ、医療サービスの向上をはかるために、彼らのキャリア形成と医療機関の人的資源管理について研究を行った。研究方法としては、既存の文献、資料の分析に加え、初年度には11の病院、3つの行政機関、5人の医師を対象にヒアリング調査を行った。次年度には、ヒアリング調査で得られた知見をもとにアンケート調査票を作成し、3000人の医師を対象にアンケートを実施し、約500の回答を得た。それらの研究により以下の成果が得られた。
 まず、医師のキャリア形成に関しては、医師に求められる専門性やスキルは何か、国家資格取得後の医師の教育訓練と組織内異動や転職はどのように行われているのか、望ましい医療サービスや求められる医師の専門性やスキルと照らして、日本の医師のキャリア形成システムの問題は何か、新医師臨床研修制度導入によってどのような変化や効果が生まれたのかについて答えを見出すことができた。また、病院の人的資源管理については、採用、職務分担、労働時間、昇進、報酬などの施策に関して調査し、医師の労働問題は何か、医師がモチベーションを保ちながら知識や技能を高め、職務に励み、医療サービスの質を高めていくための課題は何かについて示すことができた。さらに、地方や女性医師特有の問題についても調査を行い、施策を考察することができた。
 本研究期間内に、医師以外の医療従事者(看護師、薬剤師、臨床検査技師など)のキャリア形成や人的資源管理の調査、彼らも交えたチーム医療の調査を行うには至らなかったが、資料調査やヒアリング調査を通じて、今後それらの研究に発展させていくための準備を行った。また、占領時代の影響を残した沖縄の病院の調査から、今後、国際比較研究に発展させていくための視点を得ることができた。