表題番号:2011A-103 日付:2012/04/13
研究課題方向性気孔を多数有する軽量ポーラスアルミニウム合金の製法開発と強化
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等研究所 准教授 鈴木 進補
研究成果概要
近年環境負荷の低減を目的として,輸送機の軽量化が強く求められている.このような背景から,新たな軽量構造材料としてポーラス金属の開発が行われている.そのような材料のなかでも,方向性気孔を有するポーラス金属は,気孔率が増加しても長手方向には比強度が低下しないという優れた機械的性質を持つことが知られている.しかしながら,従来このような材料を作製するためには加圧水素ガスを利用するなど,高価で複雑なプロセスが必要とされていた.
そこで本研究では方向性気孔を有するポーラス金属を作製することを目的として,パイプ束と基材溶湯とを溶融接合させ,簡易的に均質な気孔形状の方向性気孔を有するポーラスアルミニウム合金を作製する凝固プロセスを考案した.本申請課題では,パイプ浸漬実験と連続鋳造実験を行い,パイプと基材の接合状態を調べ,本方法の有効性を明らかにした.
 純Alパイプ(内径:18 mm,肉厚:1 mm)を600 ℃に加熱したAl-12.6 mass%Si基材溶湯に浸漬し一定時間保持した後炉外へ取出し凝固させ,炉内保持時間を変化させ作製した試料の保持時間と肉厚の変化の関係を調べた.また,これらの結果に基づき複数本の純Alパイプ(内径:3 mm,肉厚:0.5 mm)を用いて同様の実験を行い,パイプと溶湯との接合の可否やパイプの肉厚変化などの測定を行った.溶湯温度を600 ℃,引出速度を120 mm/minとして内径3 mmのパイプと溶湯を同時に引出す連続鋳造実験を行った.
浸漬実験の結果,保持時間が増加するにつれてパイプ肉厚は減少する傾向にあったが,保持時間を長く取りすぎなければパイプは十分に接合しかつ溶損せずに残ることがわかった.また,浸漬実験で複数本の細径パイプ束を用いることで配列した方向性貫通気孔を有する気孔率約40 %のポーラスアルミニウム合金を作製することができた.連続鋳造実験では,引出されたパイプと溶湯により方向性気孔を有するポーラスアルミニウム合金を作製することができた.