表題番号:2011A-092 日付:2012/04/06
研究課題学校の校庭の芝生化が子どもの身体活動に与える影響
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 助教 石井 香織
(連携研究者) スポーツ科学学術院 教授 岡 浩一朗
研究成果概要
学校の休み時間は、すべての子どもに対して日常的に身体活動を推進できる重要な場面であり、その環境整備が急務である。文部科学省および日本サッカー協会が推進している校庭の芝生化は、休み時間における児童の身体活動を推進するための学校環境整備の一環になり得ると考えられる。しかし、校庭の芝生化が休み時間における児童の身体活動量に及ぼす影響について検討した研究はこれまでに行われていない。そこで、本研究課題では、校庭の芝生化が学校の休み時間における児童の身体活動に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。対象者は埼玉県の1小学校に在籍する3‐6年生の児童86名(男子50名、女子36名)とした。校庭の芝生化前(7月下旬)および芝生化後(10月上旬)に、加速度センサー付歩数計(スズケン社製ライフコーダ)7日間連続装着によって、中休み(25分)および昼休み(15分)における座位活動および低強度、中等度、高強度身体活動の実施時間を測定した。芝生化による各身体活動強度の実施時間の変化について、学年を共変量とした反復測定分散分析を用いて性別に検討した。有効データが3日未満の者を除き、中休み55名、昼休み56名を分析対象者とした。中休みにおいて、女子の中等度身体活動が有意に増加した(前1.3±0.7、後1.6±0.7、p=0.04)。一方で昼休みにおいては、男女ともに座位活動が有意に増加し(男子:前3.7±2.7、後6.8±3.1;p<0.01、女子:前3.9±2.3、後7.5±2.4;p=0.02)、低強度身体活動は有意に減少した(男子:前9.0±2.7、後5.6±2.1;p=0.01、女子:前9.5±2.4、後6.6±1.9;p=0.01)。芝生化により、身体動作の種類が多様になったことや、校内にいた女子が校庭に出て活動するようになったことが、中休みにおける女子の中等度身体活動の増加をもたらした要因として考えられる。一方で昼休みにおいては、身体活動が減少した。芝生化によって制限された遊びがあること、「座る」、「寝転ぶ」といった動作が増加したことが、低強度身体活動を座位活動に移行させた可能性がある。校庭の芝生化により児童の身体活動を大きく推進するためには、教員の声掛けや遊具の提供といった取り組みを併せて行う工夫が求められる。また、身体活動の内容がどのように変化して身体活動量に変化を及ぼしたのか、行動観察などの手法を用いて明らかにしていくことが、今後の課題とされる。校庭の芝生化によって、昼休みにおいては男女ともに身体活動量は減少したものの、中休みにおける女子の中等度身体活動の増加が確認された。