表題番号:2011A-088 日付:2012/03/11
研究課題荷重免荷型トレッドミルを用いた、歩行時の免荷率が下肢筋の筋活動に及ぼす影響
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 福林 徹
研究成果概要
スポーツ選手に多発する前十字靭帯再建術後のリハビリテーションでは,つま先歩行からはじめ,1/3荷重歩行,1/2荷重歩行,2/3荷重歩行,全荷重歩行へと約一ヶ月間をかけて荷重移行していく.そのため,前十字靭帯再建術ではスポーツ復帰をするまでに半年から1年近くの長期間のリハビリテーションを必要とする.特に,下腿疲労骨折の選手や,前十字靭帯再建術後の選手は,股関節・大腿・下腿の筋バランスが不均一な状態になっていることが多い.そのため,歩行時においてもバランスが調整出来ず,罹患した筋や患部の筋緊張が異常に上がり,上手く歩行できないことが十分に考えられる.近年,簡便かつ有用な免荷トレーニング手法として注目を集めているのが,NASAが開発した空気圧を用いた荷重免荷型トレッドミル(Alter G: Anti-Gravity Treadmill: Alter G 社製)である.運動器疾患のリハビリテーションに荷重免荷型トレッドミルが応用可能であれば,外傷からの早期回復が十分可能であると考えられる.そこで,本研究では荷重免荷型トレッドミル(Alter G)を用いて,筋活動特性や足底圧との関係を明らかにし,運動療法への有用性を検討した.
 下肢に疾患のない健常な成人男性8名(年齢24.9±1.8歳,身長170.8±8.3cm,体重64.0±9.5kg)を対象とした.4km/h,6km/hの速度にて,クリティカルパスに従い荷重免荷量を体重比100%,75%,50%,25%とした.また,ワイヤレス筋電計(WBA SYSTEM)を用いて下肢筋群の筋活動を計測するとともに,足底圧分布F-scanを用いて歩行時の立脚期の足底接触ピーク圧と接触面積を計測した.
 その結果,荷重免荷量が増加するに従い,大腿前面,下腿後面の筋活動は減少,大腿後面,下腿前面の筋活動は増加,足底接触ピーク圧,接触面積は減少することが明らかとなった.Alter Gは歩行中の筋活動を抑え,足底接触時の圧を減少させることが可能であり,また足関節や膝関節にかかる負荷を減少させながら歩行が可能であると考えられる.
Alter Gは免荷時期での正常な歩容の獲得に効果的で,急性外傷・術後早期の足・膝関節障害者,松葉杖等の使用者に有用であり,日常生活や競技復帰に向けた運動療法として効果的であると考える.