表題番号:2011A-086 日付:2013/04/28
研究課題運動無関心者を活動的な生活習慣へ誘うための行動心理的アプローチ:ゲートウェイ戦略が奏功する機序の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 中村 好男
研究成果概要
運動無関心者に運動を普及するためには、彼らの運動に対する関心(心理的準備性)を高めることは重要な課題である。心理的準備性を高める手段として、申請者らのこれまで研究により、趣味・余暇活動へ働きかけることが有効であることが示唆されている。ただし、この示唆を実践プログラムに応用するためには、そのメカニズムを検証することが必要である。そこで本申請課題の目的は、趣味・余暇活動に関する変容プロセスのうち、どの段階の変容が、運動無関心者の心理的準備性(運動に対する関心)の向上に関わっているのかを明らかにすることであった。
 まず、横断研究として、社会調査モニター5581名を対象にWebによる質問紙調査を実施し、趣味・余暇活動に対する「気づき」「信念」「意図」および「行動」の程度を評価する尺度を開発した。また、この調査のデータに関してパス解析を行った結果、上記4つの概念のうち、意図(パス係数:0.25)と行動(パス係数:0.09)が高いことが、心理的準備性が高いことと有意に関連していた。
 次に、介入研究(運動無関心者119名に趣味・余暇活動情報を8週間提供)のデータを分析し、これら4つの概念の中で、どの概念の変化が、心理的準備性の向上と関連しているのかを検証した。その結果、介入期間中に趣味・余暇活動に関する意図が高まった群の方が、介入期間中に意図が高まらなかった群よりも、心理的準備性が向上した者の割合が有意に高かった(意図が高まった群63.4% vs. 意図が高まらなかった群43.6%)。一方、その他の概念(気づき、信念、行動)の変化については、心理的準備性の向上との間に有意な関連性が認められなかった。
 以上の2つの分析結果から、趣味・余暇活動が運動無関心者の心理的準備性を高めるメカニズムとして、趣味・余暇活動に対する意図の高まりが徳に関与していることが明らかとなった。従って、運動無関心者の心理的準備性を高めるには、「趣味・余暇活動をやってみたい」という意図へ働きかけるような趣味・余暇活動プログラムとすることが効果的であると思われる。