表題番号:2011A-079 日付:2012/04/06
研究課題湖沼とその周辺の局地気象学的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 准教授 太田 俊二
研究成果概要
山口貯水池(通称狭山湖)に隣接する所沢キャンパスと所沢アメダスポイントでの気象観測を通じて、湖が気象現象に与える影響を調べた。本研究では、熱収支気候学的なモデル研究と現地での観測の二本立てである。
本課題の助成によって、短波放射計を二対購入し、従来までの温度、湿度や長波放射のデータとあわせて熱収支的な解明の素地を作った。また、温度、湿度の観測に関しても安定的な測定のための測器台の自作を試みた。同時に、短波放射、長波放射を正確に観測するための設置場所や設置法を探るための基礎的なデータを収集した。温湿度は約一年分のデータが得られているが、放射項のデータは欠損値が多く、本年度に関しては不十分である。しかしながら、これら気象観測によって以下のことが明らかになった。(1)所沢キャンパス南門と北門(両者の距離は700m)はほぼ同じ土地被覆であるにも関わらず、夏季の昼間には南門が北門よりも1度低く、冬季には南門が北門よりも3度高かった。(2)夏季の昼間の南門の気温は所沢アメダスポイントと同調していた。(3)冬季の北門の気温は所沢アメダスポイントと同調していた。以上の三点から、山口貯水池に隣接する所沢キャンパスの気温は湖の影響ではなく、キャンパス内の局地的な熱収支条件によって季節的に変わっている可能性が高いと言える。
短波放射などの熱収支項のデータはまだ数ヶ月分が収集されたところで、年間を通じた季節変化などは解析できていないため、局地的な気象条件の変化のメカニズムははっきりしていない。本課題終了後も引き続き観測を続け、原因を探っていきたいと考えている。さらに、貯水池の水がなかったときの気象データの解析から、湖の水が風速に大きな影響を与えている可能性が高いことを突き止め、現在論文としてまとめているところである。一方のモデル的な研究においては熱収支式をベースに主体である水温や地温を一般気象要素から推定する方法を確立した。これを応用して生物の成長を評価するモデルと結合した。その成果は、国内学会発表2件、国際学会発表2件、論文発表2件によって公開している。