表題番号:2011A-052 日付:2013/04/11
研究課題分枝アルキル鎖をもつ中性脂肪合成酵素阻害剤の合成研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 細川 誠二郎
研究成果概要
申請者はすでに、キラルな不斉補助基を有するシリルケテンN,O-アセタールとアルデヒドの反応によってアンチ付加体を選択的に合成する方法を確立している。この付加体は、delta-ヒドロキシ-gamma-メチル-alpha,beta-不飽和イミドである。まず、この二重結合を立体選択的に還元する方法を確立した。上記付加体のヒドロキシ基をメトキシメチル基で保護した化合物に対して、Birch還元を行ったところ、alpha位とgamma位のメチル基がシンとなった生成物が選択的に得られた。一方、Pd/Al2O3を触媒として水素添加を行うことにより、収率97%、選択性4.5:1にて、alpha位とgamma位のメチル基がアンチとなったものが主生成物として得られた。すなわち、還元反応を選ぶことによって、alpha位のメチル基を望みの立体配置で構築することに成功した。ここで、Birch還元の際に、基質のepsilon位の嵩高さが大きいほど立体選択性が高くなることを発見した。
申請者はさらに、シリルケテンN,O-アセタールとalpha-メチル-alpha,beta-不飽和アルデヒドとの成績体である、epsilon,zeta-不飽和-delta-ヒドロキシ-gamma-メチル-alpha,beta-不飽和イミドのepsilon,zeta-二重結合とalpha,beta-二重結合をそれぞれ立体選択的に還元する方法を開発した。ここでは、上記成績体のヒドロキシ基をt-ブチルジメチルシリル基で保護した化合物のX線結晶解析から、そのコンフォーメーションを解明し、化合物のコンフォーメーションを利用した水素添加によって、epsilon,zeta-二重結合を立体選択的に還元した。すなわち、ヒドロキシ基をフリーのままでSchrock-Osborn錯体を触媒とすることによって、gamma 位とepsilon位の2つのメチル基がシンの関係に、ヒドロキシ基をt-ブチルジメチルシリル基で保護した化合物に対するPt/Cを触媒とした接触水素添加によってgamma 位とepsilon位がアンチになった化合物を選択的に得ることに成功した。これにより、epsilon,zeta-二重結合とalpha,beta-二重結合をそれぞれ独立して還元し、望みの方向にメチル基がついた分枝アルキル鎖化合物を得ることに成功した。
さらに、シリルケテンN,O-アセタールとアルデヒドとの反応において、アルデヒド1 molに対してシリルケテンN,O-アセタールを1.5 mol、ルイス酸として四塩化チタンを4 mol反応させることにより、delta位のヒドロキシ基とgamma位のメチル基がシン体となったdelta-ヒドロキシ-gamma-メチル-alpha,beta-不飽和イミドを高立体選択的に得る汎用性の良い反応とした。