表題番号:2011A-047 日付:2013/10/29
研究課題π酸触媒連続カチオン環化に基づく抗腫瘍性物質ブルセアチンの効率的不斉全合成研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 中田 雅久
研究成果概要
本研究では bruceantin の骨格を効率的かつ立体選択的に構築し、最終的に不斉全合成を達成する上で、bruceantin のABC環の効率的構築法の開発に焦点を当て、鎖状の基質にアルキンを導入し、遷移金属触媒を用いたπカチオン発生に伴う連続環化により、bruceantin のABC3環式骨格をワンポットで立体選択的に構築する手法の確立を目的とした。当初の予定通り、アルキンを含む各種鎖状基質の合成には成功したが、遷移金属によるアルキンの活性化においては、共存する水などの反応に伴う副生成物の生成が多く見られ、多くの条件検討にもかかわらず、複雑な生成物の混合物を得る結果となった。エントロピー的に不利な鎖状化合物の環化を促進させる目的で、Thorpe-Ingold効果を考慮に入れ、四級炭素を導入した基質設計も行なったが、上記の状況は変わらなかった。そこで、bruceantin のAB環構築は渡環型Diels-Alder反応あるいは分子内Diels-Alder反応により構築し、CD環部分の構築を連続的な環化反応により行うこととし、検討を行なった。渡環型Diels-Alder反応については、必要な基質である13員環マクロリドの構築には成功したが、検討の結果、環化生成物は得られなかった。一方の分子内Diels-Alder反応については、基質ジエン部が三置換アルケンを含む場合、環化反応は進行しなかったが、二置換アルケンのみ含む場合は、加熱条件では生成物は得られなかったものの、ルイス酸存在下では0度で反応が進行し、71%の収率で環化体を単一生成物として得ることに成功した。生成物の立体配置の確認は、生成物をγ-ラクトン体に変換し、NOESY測定により行なった。その結果,所望の立体配置を有することが分かった。そこで今後はこの生成物を中間体とし、連続的な環化反応によるCD環部分の立体選択的構築を進める予定である。