表題番号:2011A-046 日付:2012/04/10
研究課題粘弾性流体に潤滑されたジャーナル軸受けの安定化に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 富岡 淳
研究成果概要
本研究では,潤滑剤の粘弾性特性がジャーナル軸受の運転安定限界に及ぼす影響について明らかにすることを目的とし,線形マックスウェルモデルに基づく潤滑方程式を誘導した.さらにこの式をジャーナル軸受に適用した.得られた潤滑方程式は圧力の時間微分項を含んでいるため,ジャーナルの微小旋回運動を仮定した摂動法を用いて線形化し,油膜係数を得た.その後,フルビッツの安定判別法を用いて,潤滑油の粘弾性特性がジャーナル軸受の安定運転限界特性に及ぼす影響を検討した.得られた結果を以下に示す.
(1)潤滑剤の粘弾性特性は,ジャーナル軸受の線形弾性係数のうち主対角成分であるk1およびk4に影響を及ぼすことがわかった.
(2)潤滑剤の粘弾性特性は,ジャーナル軸受の線形減衰係数のうち連成成分であるb2およびb3に影響を及ぼすことがわかった.
(3)粘弾性流体潤滑ではニュートン流体潤滑に比べて,偏心率がε<0.3程度で安定領域が広がっており,また,0.3≦ε≦0.7程度では不安定領域が広がることがわかった.
(4)軸剛性が小さくなるほど不安定領域が広がる傾向があったが,これらは粘弾性流体潤滑の方がニュートン流体潤滑に比べて顕著であった.
(5)軸受幅径比が大きくなるほど粘弾性流体潤滑の影響を受けるため,低偏心率での安定領域の拡大や中偏心率での不安定領域の拡大が顕著であった.
(6)一方,マックスウェルモデルに基づくレオロジー方程式を差分化することで数値解析に適した潤滑方程式を誘導した.また,この式を運動方程式とともに直接解くことで粘弾性流体潤滑されたジャーナル軸受の軸心軌跡を計算した.
(7)粘弾性流体潤滑の場合,低偏心率域では,ニュートン流体潤滑の場合と比較して安定領域が広がり,速度変数βがより小さくなるまで安定な軸心軌跡が得られた.しかし,中偏心率域では不安定領域が広がるため,ニュートン流体潤滑と比較して速度変数βがより大きな値で軸心軌跡が発散し始めた.このような傾向は,摂動法により得られた安定限界線図とよく一致していた.