表題番号:2011A-037 日付:2012/04/05
研究課題日本各地の自然土壌を用いた省エネ低コスト型の汚染水浄化材料の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 香村 一夫
研究成果概要
1. 研究目的
 わが国は火山国である。そして国土の多くは火山灰土壌で覆われている。この火山灰土壌は粘土鉱物を多く含み、重金属や有機物を吸着・捕捉する特性を有している。そこで、これらの良質の地域土壌を用いた省エネ・低コスト型の汚染水浄化材料の開発を考えている。材料の良否を判断する基準に関する定量的評価方法については、以前より研究を進めており、現在までにほぼ確立した。本研究では、この手法を、日本各地で採取した土壌に適用し、得られた評価について、採取地・層準・構成鉱物等に基づいてデータベース化した。これらをもとに各土壌の有する汚染水浄化能力についてまとめた。

2. 研究方法
 国内に分布する各種土壌から、既存試料を参考にして、土壌汚染浄化に有効と思われるもの採取した。それらの採取地は、北海道南西部および十勝地方、青森県~岩手県、関東地方、八ヶ岳山麓および九州南部である。最初に、これらの土壌の吸着能に影響を与える因子となる「微小粒子」「腐植物」について、種類や量を検討した。その後、各試料に対して、バッチ試験を実施した。試験は、重金属と有機汚濁物質に関して実施した。重金属吸着に関する試験で用いる実験溶液は、Pb,Cu,Zn,As,Cd,Cr等を単一で溶かし込んだものを用いた。供試溶液の濃度やpHは数種類の場合を用意した。有機汚濁物質の吸着試験に用いる溶液は、数ケ所の廃棄物最終処分場で採取した浸出水である。以上に記したバッチ試験より、各土壌の単位重量当たりの各物質の吸着量を求めた。さらに、吸着等温式を用いた試験により、各土壌の各物質に対する最大吸着量を算出した。

3.研究結果
 各試料における重金属および有機汚濁物質吸着特性は、含有する粘土鉱物の種類や腐植量に影響を受けている。各地の土壌の吸着能についてその概要を下記する。
①北海道十勝地域の土壌・・・・Cd,Cu,Pb,Znイオンの吸着量は腐植量と粘土鉱物であるハロイサイトの有無に影響される。AsおよびCrは、溶液中で陰イオン形態の化合物となるため、アロフェンやフェリハイドライトの有無に影響されている。
②青森県・岩手県で採取した土壌・・・・前述の北海道の土壌の吸着特性と類似した傾向を有する。本地域に分布するクロボク土壌の重金属吸着能は他地域のものより高いといえる。
③関東ローム・・・・腐植物の含有量が相対的に低く、陽イオン吸着量は粘土鉱物の種類に影響されている。Asおよび有機汚濁物質の吸着はフェリハイドライト含有量に依存している。
④八ヶ岳山麓土壌・・・・ハロイサイトを含有する土壌および相対的に腐植含有量が多い土壌が陽イオンの重金属吸着に影響を与えている。
⑤シラス土壌・・・・Cu,Zn,Pb,Cdイオンの吸着は含有粘土鉱物に影響されている。As,Crおよび有機汚濁物質の吸着は、土壌中のAlとFeの含有量と相関を有する。