表題番号:2011A-036 日付:2012/03/05
研究課題2対称面不斉ピリジン配位子の合成と不斉反応への応用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 鹿又 宣弘
(連携研究者) 理工学術院 助手 小川熟人
研究成果概要
本研究では,シクロファン構造を有する面不斉ピリジンを新しい不斉有機分子,不斉配位子の有力候補と捉え,これまでにない“C2対称面不斉ピリジン配位子の合成と不斉反応への応用”を目指すことを研究目的として研究を行った.はじめに,面不斉に由来する光学活性ピリジノファンを2個組み込んだ新たなC2対称二座配位子として,新規な面不斉ジピリジルイミンと面不斉ジピリジルエーテルの合成を検討した.ブロモピリジノファン誘導体に対し,ナトリウムアミド存在下にBuchwald-Hartwigクロスカップリングを行うことで面不斉ジピリジルイミンを,カリウムtert-ブトキシドを用いたクロスカップリング反応により面不斉ジピリジルエーテルを合成した.このうち新たに合成した面不斉ジピリジルイミンでは,1つのピリジノファン部位がアミノピリジンとピリジンイミンの平衡混合物として存在すること,ならびにその存在比に温度依存性が認められることを見いだした.
これらの新規配位子を不斉触媒配位子とする触媒反応について検討を行った.銅触媒を用い,ジアゾ酢酸エステルとスチレンによる触媒的不斉シクロプロパン化を行ったところ,面不斉ジピリジルイミン,面不斉ジピリジルエーテルはいずれも 2-5 mol% の触媒量でシクロプロパン化が進行し,光学活性シクロプロパン体を与えた.特に面不斉ジピリジルイミンを用いた場合,収率74%でシクロプロパン体を与え,トランス体が29% ee, シス体は48% eeであった.従来の面不斉ビピリジンでは面不斉ピリジノファンのピリジン環部分が直結した構造であったため,系中で発生する金属錯体の安定性に問題があったが,今回アミンおよびエーテルとして窒素原子および酸素原子を挟むことで,金属錯体の安定性が向上し,より高い触媒活性が得られたものと考えられる.今後アミン窒素原子上に置換基を導入することで電子的および立体的に触媒活性を制御し,不斉収率の向上に向けて研究を継続する予定である.