表題番号:2011A-035 日付:2012/03/13
研究課題軸索ガイダンス関連因子CRMPのリン酸化による機能制御の個体レベルでの解析と応用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 大島 登志男
研究成果概要
脳機能の発現には正しく神経回路が形成される必要があり、その過程で軸索ガイダンスという機構が重要である。細胞外に分泌される軸索ガイダンス分子とそれを感受するシステムの組み合わせがあり、Sema3Aというガイダンス分子を感受し、それに反応するために必要な分子として同定されたものがCRMPである。我々はCdk5の基質としてCRMP2を同定し、そのSer522をCdk5がリン酸化することを示した。本研究では、CRMPの機能をそのリン酸化による調節を含めて、マウスとゼブラフィッシュをモデル生物として用いて個体レベルで明らかにすることを目的として研究を進めてきた。CRMPはCRMP1-5の5つの遺伝子でコードされたホモロジーの高いファミリータンパク質であり、それがヘテロテトラマーを形成して機能している。遺伝子改変マウスはCRMP1,CRMP4のKOマウスとSer522をAlaに1アミノ酸置換したCRMP2のみを有するCRMP2KIマウスを用いて研究を進めた。CRMP1KO;CRMP2KIの大脳皮質の神経細胞は特にbasal dendriteの投射領域が変化する異常が明らかとなり(Yamashitaら2012)、CRMP4KOマウスでは先に報告されたSema3AKOマウスと同様に、海馬CA1の錐体神経細胞のapical dendriteの分岐の異常がそれぞれ観察された(Niisatoら2012)。また、ゼブラフィッシュの胚に遺伝子のノックダウンが可能なCRMPのAMOを導入してその効果を調べたところ、脊髄内感覚神経細胞(RB細胞)の位置の異常がCRMP2, CRMP4AMOで観察され、同様の異常がCdk5AMOで起こることが判った。さらに、Cdk5AMOの異常がCRMP2,4のリン酸化により改善することから、CRMP2,4のリン酸化がRB細胞の位置の決定に重要であることが示唆された(Tanakaら投稿中)。以上より、神経系の発達、特に樹状突起の形成や細胞の位置決定にCRMPのリン酸化が必要であることが、個体レベルで明らかになった。