表題番号:2011A-033 日付:2012/02/28
研究課題ニオブ酸リチウム・タンタル酸リチウム混晶系の非線形光学特性に関する国際共同研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 上江洲 由晃
研究成果概要
I. 研究成果
ニオブ酸リチウム(LN)およびタンタル酸リチウム(LT)は、能動光学素子、波長変換素子、表面波フィルター、焦電素子として広く使用されている強誘電体であり、数多くの研究がなされてきた。それにもかかわらず、未だ解明されていない本質的な問題が存在する。このような問題点は日英でほとんど同時に認識され独立に研究が始められた。本研究は認識を共有する日英の研究機関が研究チームを組織し、密接な連携のもとにそれぞれの研究所がもつユニークな装置を用いてこの未解決の問題に総合的に取り組み、以下のような成果をあげた。
(1)パルスレーザー成膜法(PLD)を用いて、LNおよびLT単結晶をターゲットにしたLN/LT超格子薄膜をサファイア(0001)単結晶基板の上に作成することに、世界で初めて成功した。
(2)この膜のX線回折装置(XRD)および電子顕微鏡(TEM)観察から、デザインした周期をもつエピタキシャル超格子膜となっていることを確認した。
(3)組成をTEMに付属したエネルギー分散X線スペクトロメータを用いて解析した。その結果、LN層とLT層は単一組成ではなく互いに混合していることを明らかにした。
(4)XRD解析から決定した格子定数の値から、薄膜の対称性はバルクとは異なりLiが欠損している相であることを明らかにした。
(5)バルクではこのLi欠損層は対称性が中心対称性をもつ単斜晶であるが、LN/LT超格子膜の場合には対称中心のない極性をもつ単斜晶であることを明らかにした。

II. 国際ミニシンポジウムの開催
これらの成果を議論するために、Oxford大学のMike Glazer教授をこのプログラムで早稲田大学に招聘し、下記のようなミニシンポジウムを開催した。参加者は早稲田大学の学部学生、大学院学生、他大学の教員などを含めて40名近くになり、活発な議論を行った。

LNミニセミナー 「LiNbO3関連物質の基礎と応用の最先端」
Mini-seminar on “Frontiers of fundamental and applications of LiNbO3 and related materials”
開催場所:早稲田大学先進理工学部物理学科&応用物理学科会議室
(55号館N棟2階)
開催日時:11月2日(水)午後1時~4時
講演者&講演タイトル
1. 13:00-14:00:Mike Glazer (Oxford大学物理学科教授)
“On changing the birefringence of LiTaO3”
2. 14:00-15:00: Kenji Kitamura (北村健二)(物質材料機構、フェロー)
"Pyroelectric and Photogalvanic Surface Potential of Ferroelectric Crystals"
「強誘電体結晶における焦電・光起電力表面電荷」
3. 15:00-15:30: Yasunori Furukawa (古川保典)(オキサイド(株)社長)
  “Introduction of spinoff venture company from NIMS and development of over100 mW CW 355 nm laser with PPMgSLT”
4. 15:30-16:00: Sunao Kurimura(栗村直)(物質材料機構、主幹研究員)
   “Nonlinear optical devices based on Lithium Niobate family”