表題番号:2011A-022 日付:2012/03/31
研究課題ホーレスマン小学校のプロジェクト・メソッドに基づくシティズンシップ教育の実験
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教授 佐藤 隆之
研究成果概要
ホーレスマン小学校におけるプロジェクト・メソッドに基づくシティズンシップ教育について以下の二点を中心として研究を行った。第一に、同小学校があったニューヨーク市に関する総合的な学習である「ニューヨーク市学習」について分析した。ホーレスマン小学校のカリキュラムは、算数、地理、歴史、音楽、英語、自然学習(理科)、美術、工作、体育、そして、ニューヨーク市学習から構成されていた。このうちニューヨーク市学習は、警察、消防、水道、美術、移民など、ニューヨーク市における子どもの生活に関わることを、各教科のなかで教えることをとおして、有能な市民の育成を目的とするものであった。教科統合的なシティズンシップ教育であったところに、プロジェクト・メソッドの影響が認められる。第二に、6年生全クラス合同で課外活動として行われたシティズンシップ教育の実践について分析をくわえた。週に30分の公民の時間と月に20分の市民連盟(Civics League)を中心とするプログラムであり、①同校で開発された市民性測定法を利用した自己チェック活動、②市民連盟における奉仕活動、③市民連盟の組織運営の三点にとくに力を入れたシティズンシップ教育が行われたことが明らかになった。どちらの取り組みも、プロジェクト・メソッドの理論に基づいて、子どもの生活経験や学習状況と結びついたシティズンシップ教育が行われた。授業計画を予め固定せず、子どもの主体性や自発性を生かしつつ自立的な市民を育成することがめざされている。その一方で、歴史が重視されており、アメリカの建国や発展を振り返りつつ国家や社会を支える規則や組織についての知識をえる学習活動に力が入れられた。ニューヨーク市学習においては「歴史と公民」という学習領域が設定されていたことも、ホーレスマン小学校におけるシティズンシップ教育が歴史を重視するものであったことを示している。このような実践を、アメリカ新教育運動におけるシティズンシップ教育全体に位置づけて相対化して理解を深めることは今後の課題としたい。