表題番号:2011A-008 日付:2012/02/25
研究課題刑事手続における訴訟主体の拡大とその相互関係に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 教授 田口 守一
研究成果概要
特定課題「刑事手続における訴訟主体の拡大とその相互関係に関する研究」では、訴訟手続の運用を担う「人の問題」を研究テーマとした。今日、裁判員制度や新たな検察審査会制度の施行に伴って、専門家と素人との相互関係が大きな時代の課題となっており、私見は、これらの関係は「協働関係」であるべきであり、訴訟主体協働論を構築しようとするものである。それは、私見の訴訟目的論(『訴訟目的論〔増補版〕』(成文堂・2010年))を基盤とする多元的訴訟制度論の一環をなす。
 以上の研究課題は、大きく、法律専門家である法曹の役割論と、刑事手続に参加する市民と専門法曹との関係論とに別れる。以上に関して、2011年度では、裁判員制度に関する研究、検察官に関する研究および裁判官に関する研究を進めた。その研究成果は、以下の通りである。①裁判員制度に関して、ジュリスト特集「21世紀日本法の変革と針路」において、「市民参加と刑事司法」(ジュリスト1414号(2011年1月)152頁以下)を執筆し、裁判員制度の現状と課題を論じた。また、中国に寄稿し、「日本における裁判員制度の意義と課題」(中国西北政法大学『法律科学』2012年2号)において日本法を紹介した。なお、国民の司法参加の日韓比較として、「総括:国民の司法参加に関する日韓シンポジウム」(2011年12月実施の『国民の司法参加に関する日韓シンポジウム』における『資料集』収録)を発表した。また、②訴訟主体の中で検察官は極めて大きな役割を演ずる。その検察官について、検察不祥事(現職検察官による担当事件に関する証拠隠匿事件)に端を発した検察改革が緊急の課題となった。そこで、「新しい捜査・公判のあり方」(ジュリスト1429号(2011年9月)66頁以下)を執筆し、『検察の在り方検討会議の提言』について、取調べの可視化、新たな捜査手法の導入、充実した公判のあり方を論じ、刑事訴訟の目的、実体的真実主義のあり方について問題提起を行った。さらに、③裁判官論としては、「核心司法と職権主義」(『三井誠先生古稀祝賀論文集』(有斐閣、2012年1月)475頁以下)を執筆し、当事者追行主義の充実のためには、「追行的職権主義」の充実が求められ、両者は、核心司法を支える車の両輪であると主張した。