表題番号:2011A-007 日付:2012/04/12
研究課題ポッドキャストを利用したドイツ語学習環境とドイツ語聴解能力
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 教授 星井 牧子
研究成果概要
 外国語学習には一定の時間と反復練習が必要だが、教室での授業時間を増やすことには制約があり、学習は授業内で完結するものではないことを考えると、学習者が授業外に学習できる環境を準備・構築し、自律学習を促す仕組みを提供する必要がある。ポッドキャストをドイツ語学習に利用することは、学習環境の多様化に向けた可能性の1つであるが、学習者の条件や要望を考慮することも不可欠である。
 本研究では、早稲田大学法学部ドイツ語総合コミュニケーションコース(学部1・2年生)の受講生向けに、2010年度後期および2011年度前期に自習用教材として配信したポッドキャストについて、質問紙調査の結果をもとに、学生の利用実態と評価を検討した。質問紙は学期の始めと終わりに実施し、1)ポッドキャストの利用について、2)ポッドキャストの効果について、3)聴き取りとポッドキャストを用いたドイツ語学習に関する意識について、の3点について調査を行った。2011年度に実施した質問紙調査に参加したのは、1年生115名および2年生113名。あわせて2010年度後期に実施した質問紙調査(110名)の分析結果も考察した。
 ポッドキャストは移動中にも利用できることから、学生が通学途中にも利用すること、そのため利用頻度が高くなることを想定していたが、質問紙の分析結果からは、全体として利用率がそれほど高くないことが分かった。その理由としては、学生が忙しく、あまり時間がとれないこと、またMPプレーヤーのような新しいメディアの使用に慣れていないことなどが挙げられた。しかし、1度聴いた学生は続けて何度も聴く傾向にあり、ポッドキャストへの評価も高いこと、またMP3プレーヤーの所有者は多いが、移動中にポッドキャストを使用する学生は少ないことも分かった。このことから、今後、ポッドキャストを作成する際には、移動中の利用というよりも、むしろ自宅で利用することを踏まえてコンテンツをデザインする必要があると考えられる。また、今回の調査では、聴き取りやポッドキャスト利用に関する意識は、ポッドキャストの利用頻度とは特に関連性がなく、利用頻度と聴き取りの成績との相関もほとんど見られなかった。ただし、ポッドキャストの利用頻度とディクテーションの成績に関しては、ごく弱い相関が見られた。この点は今後さらに調査を行う必要がある。
 なお、本研究の成果の一部は、日本独文学会秋季研究発表会(2011年10月16日、金沢大学)でブース発表として報告した。