表題番号:2011A-002 日付:2012/11/06
研究課題公共財供給ゲームにおける情報獲得行動の視線測定器実験による分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 教授 船木 由喜彦
研究成果概要
 本研究の実施者は視線測定器を用いた経済実験の研究をここ数年、継続的に行っている。
 本研究では、公共財供給ゲームにおいて人々がどのような情報を元に公共財への投入量を決定するかを、視線測定器を用い、彼らの視線を探りながら分析するのが目的であった。しかしながら、2011年の震災等の影響もあり、2011年度の実験を準備・計画中に、視線測定器の不具合が発生し、その調整、ソフトの再インストール作業などに大変に手間取り、当初予定した実験を十分に行うことはできなかった。しかしながら、稼働可能な1台の視線測定器を用いて、従来の実験を元にしたオークションシミュレーション実験、世論調査表のパイロット調査等に応用し、それらの実験・調査における人々の情報獲得活動を同定することができ、その有用性が確認された。
 一方、公共財ゲームについては、視線測定器を用いない実験を行い、公共財に対する貢献量を促進するためのシステムとして知られている「他の被験者の投資量に応じて、個人的な懲罰行動が可能である」という制度的枠組みを導入し、その効果を検証し、他の国における結果と比較行った。その結果、日本では、他の国々と異なりあまりそのような懲罰の枠組みが機能しないことが観察された。中国や韓国などの儒教国家や欧米諸国では、貢献をしない人への懲罰が効力を発揮し、他者からの懲罰を避けるために貢献量を増大する行動を取ることが知られている。しかしながら、日本ではこのような効果が見られなかった。その理由の一つは、そもそも日本での実験では、このような懲罰行動が観察されなかったことによると思われる。
 以上のような、懲罰行動を分析するには、懲罰をする被験者の情報取得活動と懲罰の対象者との関連性が重要であり、視線測定器と懲罰付き公共財供給実験を組み合わせて実験を実施することによってこそ、このような分析が実施できると考えられる。すでに実験の準備は整っているので、その実験を2012年度中に実施する予定である。この新たな実験結果は実施、分析後、早急に公表するべく努める。