表題番号:2010B-367
日付:2011/04/11
研究課題非母語音声の計算科学 -第二言語発話分析・評価を中心とした科学的解明とモデル化-
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 | 教授 | 匂坂 芳典 |
(連携研究者) | 教育・総合科学学術院 | 教授 | 中野 美知子 |
(連携研究者) | 国際教養学術院 | 教授 | 近藤 眞理子 |
- 研究成果概要
- 本研究では非母語、特に外国語学習の対象となる第二言語発話音声の分析・評価を中心とした科学的解明を行うため、音声生成制御機構モデル、言語・音声学、音声言語情報処理技術、音声聴知覚、語学教育を統合した「非母語音声」の「計算科学」的研究を行う。これにより、非母語音声の科学的理解、第二言語音声教育への展開を目指す。
まず、学習者音声の自動評価のために、母語話者英語音声と学習者音声の時間制御特性の相違により、学習者英語音声のタイミング制御特性を客観評価する尺度の検討を行った。音声サンプル毎の発話速度のばらつきを吸収する手始めとして、当該比較音素を含む音節長による時間長正規化法を試みた。日本人学習者の英語音声コーパスを用いた実験により、正規化した時間長差異と英語母語話者が与える主観評価との相関が正規化を施さないものに比べて上昇することが判明し、提案した方法の有効性を確認することができた。この実験結果により、音素時間長の制御に関与する要素による更なる精密な正規化を用いた客観尺度の可能性が広がった。
次に、韓国人日本語学習者の特殊拍学習実験を進め、特殊拍提示コンテキストの影響を測定した。この結果、孤立単語と文での提示双方において、学習効果が示されると共に、文を用いた場合の汎化学習傾向も明らかとなった。合わせて、提示コンテキストによる学習難易度の分析も進め、時間長知覚学習へのラウドネスの関与が示唆された。
さらに、以上の個々の研究検討に加え、AESOP(Asian English Speech cOrpus Project)研究コンソーシアムのメンバーとの打ち合わせを持ち、次年度からの本格的研究開始準備のため、昨年度、AESOPメンバーと設計した音声コーパスのテスト収録を行った。日本語を母語とする学生約60名の英語音声を収録し、一部のものについて音声認識技術を用いた音素アラインメントを行い、分析データの準備を進めた。