表題番号:2010B-336 日付:2011/04/17
研究課題留学生の協働的学習に対する学習観と参加を促す授業モデルの提案
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際学術院 教授 舘岡 洋子
研究成果概要
近年、日本語教育において協働的な学習が盛んであるが、学習観の違いから授業参加に支障をきたすことが指摘されている。たとえば、中国の大学で日本語を学んできた留学生は、日本での協働的な学習に参加するときに、教師が正解を教えないことやグループで活動することなどに違和感をもち、学習に積極的に参加できない傾向がみられる。
そこで、中国からの留学生を対象に主に以下の2点について、調査を行った。

1)日本での日本語授業における協働的学習への参加について
中国からの留学生たちが来日後、日本語授業における協働的な学習活動にどのように参加し、自らの学習観を変容させていくのかを個人とクラス・コミュニティの相互作用の観点から観察した。具体的には授業の参与観察と提出物の検討、およびインタビューをとおして、どのように学習観が変わったか、あるいは変わらないかを検討した。
結果としては、学習者たちは違和感をもちつつも新しい学習のスタイルに慣れていった。自分なりの参加の態度を作っていったといえる。しかし、学習観そのものが変容したとは必ずしもいえない。

2)中国での日本語授業と日本での日本語授業との違いについて
 日本でも中国でも日本語授業のあり方は多様であり、一概にステレオタイプを当てはめることはできない。しかし、実際の授業見学の中で多くの気づきを得ることができるのも確かである。中国上海にある華東師範大学外国語学院日本語科の授業をいくつか見学し、学生たちにインタビューを行った。教師主導の授業は日本語の授業にかぎったことではなく、小学校以来、多くの授業で教師から伝え聞いて学ぶという学習スタイルをとっている。しかし、見学した学科では教員が全員、日本語で授業を行い、また、学習者たちはほとんどの者が自分でインターネットその他のツールを使って、教室外でナマの日本語に触れる機会をつくっていた。ドラマやアニメを毎週見ている者が多い。教室がおかれている社会が日本語使用環境にあるかどうかの違いなども、学習スタイルに影響を及ぼしており、必ずしも教室内だけを見て論じることができないことがわかった。