表題番号:2010B-332 日付:2013/05/15
研究課題社会的能力形成と制度変化アプローチによる地球持続性学の構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際学術院 教授 松岡 俊二
研究成果概要
 本研究計画は、経済史研究のD. North、コモンズ研究のE. Ostromや政治学のR. Putnam、O. Youngらの社会科学者における近年の制度研究の台頭に着目し、開発援助研究における能力構築論と社会科学における制度研究を突き合あせ、融合・進化させることにより、国際開発協力研究という観点から新たな地球持続性(グローバル・サステイナビリティ)学を構築することを目的としたものであった。
 具体的には、能力構築の議論を制度研究と融合・進化させ、「社会的能力形成と制度変化」という視角から途上国の社会的能力や制度の現状と問題点を評価する方法を、社会的能力アセスメント手法(Social Capacity Assessment; SCA)として開発し、こうした社会的能力アセスメント手法によって途上国の社会的能力と制度変化を分析し、「社会的能力形成と制度変化」アプローチを国際開発協力政策へ具体化することにより、地球持続性学の構築を試みることとした。「社会的能力形成と制度変化」アプローチに基づく国際開発協力をめぐる研究成果は、国際開発協力からみた地球持続性学の展開といった学術的成果だけではなく、グローバル・サステイナビリティ社会の形成支援をめざす世界の国際開発協力政策に対しても大きく寄与するものと考えられる。
 当初の研究実施期間の予定が3年であったところ、1年間の準備研究期間となったため、社会的能力の形成と制度変化の応用・適用対象として、東アジアにおける地域環境管理制度の構築を設定し、2010年9月の環境経済政策学会や2010年12月の国際開発学会の全国大会において、「環境管理能力の形成と制度変化」に関する企画セッションなどを開催し、研究成果を報告するとともに関連論文を発表した。
 以上の取り組みから以下のような知見を得た。(1)個別社会や主権国家内の社会的能力アセスメントについては、筆者らの開発してきた3×3のアクター・ファクター・マトリックス分析表などの手法が有効である。(2)東アジアにおける地域環境制度などの複数の国家にまたがる社会的能力形成や制度構築については、Putnamの2レベル・ゲームの応用などが可能である。(3)グローバル化の進展の中で、国際機関・多国籍企業・国際NGOなどの国際的なアクターの動きが重要になってきており、こうした国際的アクターの活動基盤となる地域ネットワークの形成や社会的価値や規範の共有などが、地域における能力形成や協力変化にとって重要である。