表題番号:2010B-331 日付:2013/05/15
研究課題持続可能な地球社会形成のためのガバナンスとジャーナリズムに関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際学術院 教授 松岡 俊二
研究成果概要
 本研究・「持続可能な地球社会形成のためのガバナンスとジャーナリズムに関する研究」は、地球持続性研究の課題群から、ガバナンスとジャーナリズムという2つの課題に着目し、持続可能な地球社会形成の動態過程を考察することを目的とした。その際、本研究は、地球環境ガバナンスの形成のためには、重層的・多面的環境ガバナンスの研究と重層的・多面的アクター間の情報共有を促進するジャーナリズム研究を結びつけることが不可欠であるとの仮説に基づいた。そのため、本研究は、重層的多面的環境ガバナンスの理論的・実証的分析を主に環境経済学や環境政治学に基づいて行い、こうしたガバナンス形成にかかわるジャーナリズムのあり方を主として社会学をベースとしたジャーナリズム(マスコミ)研究として組織し、全体として学際的共同研究を行うことを目的としたものであった。
 本研究計画は当初、5年間の研究期間を予定していたが、1年間の準備期間となったため、主に重層的・多面的ガバナンスの形成と発展に焦点を当てた、研究活動を行うこととした。また、共同研究者として、日本大学生物資源科学部・松本礼史准教授、滋賀大学環境総合研究センター・田中勝也准教授などが参加した。
 2010年度の研究では、重層的・多面的ガバナンスの具体的な分析対象として東アジアにおける地域環境制度をとりあげ、こうした地域環境制度の形成と発展のメカニズムに焦点をあてた研究活動を行い、環境経済政策学会、ヨーロッパ環境政治学会、国際開発学会などにおいて研究報告を行うとともに、論文などを作成した。
 以上の研究活動を通じて、以下のような知見を得た。(1)重層的・多面的環境ガバナンスとしての地域環境制度の分析を、制度論的アプローチにより行うことによって、東アジアの地域協力制度の経路依存性が1990年代前半の政治社会経済状況に大きく規定されていることがわかった。(2)東アジアの地域環境制度は、従来、弱い制度あるいは効果的ではない制度として把握されてきたが、こうした弱い制度が持続しているメカニズムの解明が重要である。(3)地域環境協力制度は、経済協力制度や政治的・安全保障協力制度などと相互関連性・相互規定性が強くあり、こうしたセクター間・機能間の制度間関係を分析することが今後の制度変化や制度発展を考える上で重要である。