表題番号:2010B-321 日付:2011/04/04
研究課題ドイツ語の文法上の性を効率的に教える方法の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際学術院 教授 岡村 三郎
研究成果概要
ドイツ語には文法上の範疇としてGenus(文法上の性)があり、名詞には男性名詞、女性名詞、中性名詞の区別がある。Genusは文法上の範疇であり、自然の性(Sexus)とは関係がないとされる。しかし人を示す名詞の場合はGenusとSexusとが一致するケースも多い。
一方日本語には文法上の範疇としてGenusは存在しないし、日本人が最初に習う英語においても名詞のGenusはほぼ消滅している。日本語と英語しか知らない日本人学習者がGenus(文法上の性)を持つドイツ語を学習する際に困難を覚えるのは当然である。
この研究ではドイツ語の文法上の性をどのようにすれば効率的に教えることができるか、その方法を開発することが目標である。それにはドイツ語名詞へのGenus割り当ての規則性を明らかにする必要がある。規則性の一つの例としてはドイツ語の特定の派生語尾(例えば-heit, -keit, -tum等)と特定のGenusとの関係が挙げられるが、学習者はそれを一つ一つ覚えなければならない。
今年度の研究では、より一般的な、すなわち学習者にとってより覚えやすいGenus割り当ての規則性を求め、主に文献を中心として研究をで行い、単に名詞のGenus割り当て規則のみに絞った研究のみならず、Genusを名詞の屈折と関連づける研究(すなわちNumerus「数」および Kasus「格」と関連づけた研究)(Wegener等)も研究対象とし、新しい知見を得ることができた。
さらに研究の一環として、ドイツ語に入った日本語語彙へのGenus割り当てを調査し、規則性を明らかにしようとした。すでにOkamura(2005)ではドイツ語に入った日本語からの115の借用語を対象として研究し、その語の持つ意味に対応するドイツ語語彙のGenusをとる場合が多いことを明らかにしているが、より多くの借用語を対象とし調査した結果、意味の対応がGenus割り当てに非常に重要な役割を占めることが明らかになってきた。この調査を引き続き行い、成果を論文にまとめるつもりである。