表題番号:2010B-309
日付:2011/04/07
研究課題日常的・継続的スポーツボランティアのマネジメントに関する研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
---|---|---|---|
(代表者) | スポーツ科学学術院 | 准教授 | 作野 誠一 |
- 研究成果概要
- 2010年7月現在、総合型地域スポーツクラブ(以下「総合型クラブ」)は創設済み・創設準備中を含め、全国の1,249市町村(71.4%)に3,114クラブあるといわれている(文部科学省,2010)。本研究では全国の総合型クラブを対象とした調査をもとに、今後のクラブづくりのあり方と課題を、自立指向とビジネス指向という観点から検討することを目的とした。総合型クラブは日常的・継続的スポーツボランティアに支えられる組織であり、そのマネジメントについては不明な点が多いが、本研究はその重要な部分をなすものである。クラブタイプの分類にあたっては、「自立指向」と「ビジネス指向」という2次元を採用し、それぞれの高低による4タイプを仮定したこれらの4つのタイプ別にクラブ諸属性(会員数、設立年、範域、予算規模、法人格など)、設立による変化(効果)、組織活性化タイプ(能率指向性、革新指向性、相互支持性、主体的挑戦性、住民指向性)等の差異と特徴について分析を行った。配票数1,027クラブに対し、回収サンプル数は441(回収率:42.9%)、うち有効サンプル数は436(有効回答率:42.5%)であった。組織成果については、全般に自立指向の高い群(Ⅰ・Ⅱ群が)が、低い群(Ⅲ・Ⅳ群)に比べて有意に高い傾向が明らかになった。このことから組織成果に対しては自立指向が影響を及ぼしていることが推察された。また相関分析の結果も併せて考えると、ビジネス指向が高いことと自立指向が高いことは必ずしも同じではなく、成果という観点からは自立指向を高めることがクラブにとって重要な課題となることが示唆された。
本研究では、自立指向と5つの組織活性化タイプとの有意な相関が確認されたが、金井(1991)が指摘するように、組織活性化はリーダーシップの影響を受けることから、人的条件が自立指向にも影響を及ぼしていることは容易に推測される。また、今村ら(2010)はPutnam(1993)が指摘するソーシャルキャピタルの3つの特徴、すなわち「社会ネットワーク活動」「相互信頼」「互酬性の規範」をふまえつつ、意図的に実施できることは「社会ネットワーク活動」を促進することのみであり、その波及効果で人びとの間の「相互信頼」が醸成され、それが社会的に定着すると「互酬性の規範」が形成されると述べている。これもまた人的条件の整備が重要な課題であることを示唆している。