表題番号:2010B-301 日付:2011/02/27
研究課題身体運動、睡眠の質、前頭葉機能の相互関係に関する総合的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 内田 直
研究成果概要
【背景】
運動をすると良く眠れると一般には考えられている。しかしながら、これまでの実験研究においては身体運動が睡眠に及ぼす影響については、まだ統一的な見解は十分に得られていない。一方、身体運動はメタボリックシンドロームのような身体疾患だけでなく、うつ病や認知症など前頭葉障害が想定される疾患に対しても良い効果があると考えられ始めている。また短時間睡眠はうつ病の危険因子である。このように身体運動=睡眠=前頭葉機能という3つ事柄は密接に関連しており、これらを総合的に研究することにより、運動、睡眠を含めた24時間の健康的な生活を、脳機能という視点から考えることができる。本研究の目的は、このように、身体運動=睡眠=前頭葉機能の3つの関連を総合的に明らかにすることにある。

【本年度の研究】
本年度は、主には二つの研究を行った。一つは、睡眠直前の高強度運動が睡眠に及ぼす効果を明らかにする研究で、睡眠の質の測定として従来のポリグラフだけではなく、自律神経系の指標である心拍変動と、直腸温を経時的に測定解析した。もうひとつは、長期に渡るフィールド研究として、20名の運動習慣のない被験者に対して、毎日自転車エルゴメーターによる運動をしてもらい、その結果として、睡眠、気分、前頭葉機能にどのような変化が現れるのかを明らかにする研究の組み立てを行った。

【結果】
一つ目の睡眠直前の高強度運動後の睡眠では、ポリグラフによる睡眠の質に有意な変化はなかった。しかしながら、自律神経系、体温には有意な変化があり、運動は中枢神経系の睡眠よりもむしろ睡眠中の身体活動に大きな影響があると考えられた。
二つ目の準備では、前記のパラダイムによる長期実験が2011年4月より開始できる見込みとなった。

【今後への展望】
今後、一過性の運動と長期の運動習慣の両方の視点から、睡眠、前頭葉機能、気分などにたいする身体運動の影響を総合的に考察していきたい。