表題番号:2010B-299 日付:2011/04/07
研究課題ドーピング禁止薬物の治療目的使用に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 赤間 高雄
研究成果概要
(1)治療目的使用に係る除外措置申請の現状分析
ドーピング禁止物質を疾患治療のため使用する競技者は「治療目的使用に係る除外措置(Therapeutic Use Exemption : TUE)」申請を行い、承認を得なければならない。国内のTUE申請数は、2010年度(2010年4月-2月末)で140件あった。
(2)呼気凝縮液の炎症関連物質測定
(目的)気管支喘息の客観的な診断は、気道可逆性試験や気道過敏性試験としてスパイロメトリーで気管支収縮を間接的に測定する方法が重視されているが、検査に長時間を要し、気管支喘息の一時的悪化の危険性も伴うため、競技者の運動誘発性気管支れん縮の診断にはより簡便な方法が必要である。本研究は、競技者の負担が軽減され、簡便に採取可能な呼気凝縮液中の炎症関連物質の測定方法の開発、および呼吸機能検査との関連性を検討することを目的とした。本研究では、まず、健常者における運動前後の呼気凝縮液を採取して、検討した。
(方法)健康な成人男性10名を対象とし、8分間の自転車ペダリング運動前後の呼気凝縮液を採取した。呼気凝縮液中の炎症関連物質としては、cysteinyl Leukotrienes(cysLTs:LTC4、LTD4、LTE4)を測定した。また、運動前後にはスパイロメーターを用いた呼吸機能検査も実施した。
(結果)採取した呼気凝縮液中のcysLTs濃度の運動前後における有意な変化は検出できなかった。小児期の気管支喘息の既往がある対象者2名では、運動後に呼気凝縮液量、呼気量および1秒率の低下が観察された。
(考察)先行研究では気管支喘息患者で発作時の呼気凝縮液のcysLTsの変化が報告されている。今後、気管支喘息の既往もある競技者や運動誘発性気管支れん縮の競技者において検討する予定である。