表題番号:2010B-283 日付:2011/02/21
研究課題禁煙支援における再発予防プログラムの開発とその評価
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 竹中 晃二
(連携研究者) 大学院人間科学研究科博士課程 博士課程院生 満石寿
研究成果概要
 本研究の目的は,禁煙経験者を対象に成功・失敗も含めて,いったん禁煙した者がどのような状態で,再発(リラプス)に導く一時的喫煙(ラプス),また真の再発を起こしやすいのか,すなわちラプスや再発を生じさせやすいハイリスク状況を調査し,その際に使用している対処方略の内容を探り,それらの情報を基に「吸いたい」という衝動や渇望に対して効果的な対処反応の内容を盛り込んだ再発予防プログラムの開発を行うことである.また,日常生活におけるストレスが再発を助長することから,プログラムには効果的なストレスマネジメントを組み込んだ.

 本研究では,まず効果検証のために,離脱症状および喫煙衝動を評価可能にする日本語版尺度(MPSS)の開発を行い,携帯電話による離脱症状および喫煙衝動の評価の有用性を明らかにした.次に,日常生活場面における対処方略に焦点をあて,禁煙を開始した際に実施している対処方略(行動的対処方略および認知的対処方略)を調査した.その結果,日常生活場面では,行動的対処方略を多く実施し,認知的対処方略と比較して離脱症状および喫煙衝動に対する軽減効果が明らかになった.次に,対処方略の効果の向上および効果的なアプローチの提案を目的として,禁煙に関する阻害要因評価尺度を開発した.第1因子は『ニコチン依存』,第2因子は『喫煙行動に対するイメージ』,第3因子は『空腹感や体重増加に対する不安』,最後に第4因子は『喫煙による気分改善への期待』の4因子が抽出された.これらの阻害要因の結果は,禁煙を開始した際に,個人に適した禁煙支援および対処方略を提供するための重要な手がかりになる.

 本研究では,禁煙に伴う離脱症状および喫煙衝動評価尺度および禁煙に関する阻害要因評価尺度を開発し,症状に対する対処方略として,認知的対処方略と比較して行動的対処方略が有効であるものの,対処方略の内容は個人によって異なることが示唆された.今後は,長期的に禁煙支援を行い,阻害要因やハイリスク状況によって異なる離脱症状および喫煙衝動に対して,効果的な対処方略の検討を重ね,個人の特徴に適した再発予防プログラムの開発を行っていく必要がある.