表題番号:2010B-276 日付:2011/04/11
研究課題運転支援情報が運転者のリスク知覚に与える影響
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 石田 敏郎
(連携研究者) 人間科学学術院 助教 島崎 敢
研究成果概要
 高度道路交通システム(ITS)を利用した予防安全技術による対策が進められているものの一つに,インフラ協調の路車間通信による安全運転支援システム(DSSS)がある。これは,直接見えないまたは見落としの恐れのある交通事象を車載システムに送信し,出会い頭衝突事故を防止するシステムとしても有効活用できると考えられる.しかし同システムで利用される可能性が高い無線通信システムの有効通信範囲は30m 程度であるため、運転者への情報提供可能な範囲が制限されてしまうかのうせいがある。
 本研究では,ドライビングシミュレータ上で見通しの悪い交差点場面を用い、安全運転支援システムにおける適切な情報提供タイミングと情報提供方法を明らかにすることを目的として実験を行った。
実験参加者は運転免許を保有する20名(男性13 名、女性7 名)であった。研究用ドライビングシミュレータ(三菱プレシジョン製 D3SIM ver.5)を用い,標準的な市街地で、右折2 回・左折3 回と情報提供区間における走行を実施した。情報提供には警告音を用い,30m 手前、交差点50m 手前)」と「提供方法条件(警告音のみ、警告音と同時に交差点内の映像を提示)」の組み合わせに「情報提供無し条件」を加えた5 条件を用いた。
 結果として,ブレーキの強さと情報提供タイミングの主効果が見られ(p<.01)。ブレーキ強度は「支援なし>30m 手前>50m 手前」となり、情報提供のタイミングが交差点に近ければ近いほどブレーキは強くなった。また,交差点までの距離に関わらず、情報提供に対して減速行動を行う傾向がみられた。以上のことから,運転者から見えていない交差車両の情報を提供することが、減速行動を誘発することや交差点通過速度を減少させることが分かった。さらに,提供方法による影響がみられなかったことから、危険の察知と対応のための準備動作には複雑あるいは精緻な情報を必要とはせず、危険報知の機能のみで十分であると考えられる。
 今後,交差点事故低減のための情報提供のあり方について,より詳細な検討をするつもりである.