表題番号:2010B-268 日付:2011/04/09
研究課題18世紀イギリスにおける消費文化とアーバニズムの展開
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 教授 中野 忠
研究成果概要
本年度は研究課題に関する研究協力者との共同研究を進めるとともに、研究代表者は18世紀イギリスの消費と都市文化の中心となるロンドンについて、次のような研究を進め、成果をあげた。
① 都市の市民権と自由。19世紀の地方自治の熱烈な擁護者だったトルミン・スミスのロンドンに関するパンフレットを中心に、都市と自由をめぐるイギリスの政治文化について考察した。中世以来、都市社会の中心的構成員は各種のギルド(カンパニー)に帰属するフリーメンだとされるが、スミスはそれが本来の「市民」とは別のものであることを強調する。本研究によって、イギリス、特にロンドンの「アーバニズム」を支えた独特な歴史的・文化的・政治的基盤の一端を解明することができた。
② ロンドンの地域社会。ロンドンは実に多様な地域社会の組み合わせからなる。今年度は特に、17世紀後半のロンドンの西部(ウェストエンドの一部)の地域(聖ダンスタン教区)に焦点を絞り、課税台帳、教区簿冊、区集会議事録などの原史料を用いて、その社会的・経済的・人口学的特徴を明らかにした。この地域の特徴は、専門職の集中と住民の高い移動性にある。これを踏まえて、次にはこの地域社会がどのように統治され、それがどのような方向に変化していくかを、役職制度とそれへの住民の関わり方を通じて検討する。17世紀から18世紀にかけてのロンドンの役職制度と役職忌避の問題は、2010年7月の「比較都市史研究会」400回記念シンポジウムで報告し、その詳細は2011年9月の会誌に掲載される。
本研究課題に関する研究協力者との研究成果は、2010年度に行なった社会経済史学会全国大会でのパネルディスカッションをもとに、現在『18世紀イギリスの「都市ルネサンス」―都市空間の再構築―』というタイトル(仮題)の著書(執筆者9名)を刀水書房より2011年度中に刊行すべく準備を進めており、研究代表者も18世紀の都市化と消費文化についての展望を書くことになっている。