表題番号:2010B-199 日付:2011/02/22
研究課題炭素繊維強化複合材料の精密設計のための長期寸法保証の確立
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 助教 荒尾 与史彦
研究成果概要
 本研究では,軽量かつ高精度のCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)ミラーを開発することを目的としてる。CFRPを用いた精密設計手法を確立することで,宇宙望遠鏡の性能のブレークスルーをはかることができ,天文物理学の発展に大きく寄与することができる。開発を行うためには,CFRPの長期寸法保証を行う必要がある。フラットな積層板が,ねじれや鞍型状に面外変形を引き起こすことで,CFRPミラーの性能は大きく損なわれる。CFRPの形状保持機能を見極めるために,研究を遂行した。
 ねじれ変形や鞍型状に形状を崩す要因として,CFRPを作製するさいに生じる積層誤差が挙げられる。積層誤差が存在すると,熱変化などにより図1に示されるようなカップリング変形を引き起こす。本研究の成果により,CFRPの積層角度の精度を確認することができた。積層精度は,熟練者が積層したとしても,標準偏差で±0.4°存在することが判明した。この値がCFRPの成形精度の限界値であり,この誤差を踏まえて精密設計をする必要がある。
 本研究では積層誤差が0.4°各層に存在すると考え,その場合に熱変化により生じる変形(Peak to Valley値)を求めた。P-V値は観測したいものの波長によって大きく異なる.例えば可視光領域では波長が700nmなので,P-V値はその1/8の90nm程度まで抑えこむ必要がある。1mの反射鏡を想定した場合にこの値を達成するためには,温度変化を1K以下に制御すること,さらに適切な背面構造を取らなければいけないことを解析的に示した。このことより,CFRPミラーの可視光への適用の可能性を示すことができた。