表題番号:2010B-196 日付:2013/10/23
研究課題反応集積化による多置換多環式天然生理活性物質の短段階合成
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 細川 誠二郎
研究成果概要
 o-アミノフェノールに酸性条件下、触媒量の酸化剤を作用させることにより、一工程でカテコールに変換する方法を見いだした。この変換は、o-アミノフェノールからo-イミノキノンへの酸化およびo-イミノキノンからo-キノンへの加水分解、o-キノンによる未反応のo-アミノフェノールのo-イミノキノンへの酸化を含む、自己酸化還元触媒反応である。この反応機構はo-アミノフェノールにo-キノンを作用させることで同様の変換が起こることを示すことによって証明した。自己酸化還元触媒反応は非常に稀な変換法であり、官能基の変換を伴う自己酸化還元触媒反応は本方法が初の例である。この反応を用いて、中性脂肪合成酵素阻害作用を持つエピコクリオキノンAの全合成に成功した。この全合成では、他にも、ニトロアルドール反応と脱水を一工程で行い、ジエンのニトロアルケンへの共役付加とニトロディークマン反応を一工程で行って一挙にシクロヘキセノンを合成する方法を確立した。また、糖から誘導したβ―シロキシケトンとアセト酢酸メチルを塩基性条件下混ぜるだけで、一挙にオキサデカリンを得ることに成功した。すなわち、この変換では、塩基性条件下β―シロキシケトンからのシラノールの脱離によるエノンの生成とそれに続くアセト酢酸メチルの共役付加、アルドール縮合、エステル部の加水分解、脱炭酸が順次進行し、オキサデカリンを与えるものである。
 この様に、多数の変換において多数の反応の集積化を実現し、エピコクリオキノンAの短工程の全合成に成功した。ここで達成された変換反応は、様々な天然物に応用可能な有用性の高いものである。