表題番号:2010B-187
日付:2011/04/11
研究課題幼児の豊かな知性・感性を育む音環境づくり
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 | 准教授 | 及川 靖広 |
(連携研究者) | 理工学術院 | 教授 | 山崎芳男 |
- 研究成果概要
- 保育の場は、子どもにとってはじめて家族以外の集団の中で生活する場である。様々な場面において集団でともに活動する中で社会の規律を体得することは、幼児教育の場が担う大きな役割の一つである。それ故、話を聞く場面や音楽活動等の授業場面のみならず、食事や着替え行為等の日常生活行動も幼児に とって重要な学習場面であると捉えられる。また、集団活動の規模として自分と教諭、同年代同士という小さな集団からクラス全体といった大きな集団での活動へと、年齢とともに発展してゆく。学習場面として日常生活行動が重要であること、及び年齢ごとにコミュニケーション形態が異なることは保育の場の環境設計において重要な観点である。
現在までに、幼稚園教育の場における音環境の現状把握及び実験的な環境設 計に取り組んできた。本研究では、幼児の行動に伴う発生音を学年別に観測し、発達に適した学びの場として重要な音響条件を考察した。さらに対象を日本国内の幼稚園に限らず、国外の同様の施設についても調査を加えることとした。具体的には、ドイツ、ミュンヘンの幼稚園と共同でその音環境の調査をした。
その結果、幼稚園での一斉保育活動に着目し、年齢ごとに活動の成り立ちが異なること、及びそれに伴って音環境が異なる傾向にあることについて言及すると同時に、教育の場として学びの質自体も大きく変化し、教諭のかかわりが大きく変化してゆくことを観測した。幼児の行動発達としても、他者とのかかわり方の発達から、音情報の受け取り方、行動に伴う音のフィードバックの受け方も著しい発達過程にあることが示唆された。また、学年ごとの違いが大きいことから、同じ学年でも1年間で学びの質が大きく変化してゆくことが推察できる。
以上の結果から、保育の場の音環境設計として落ち着ける適度な静けさの確保は共通して求められる要件であるといえよう。それに加え、室内での学びの形態が発達過程に沿って展開し得ることが重要であるとすると、教諭によって適宜環境設計をおこなうことが必要である。今後は、幼児の音コミュニケーシ ョン活動に着目し、その発達過程を捉え環境設計にフィードバックしてゆく所存である。