表題番号:2010B-185 日付:2013/04/04
研究課題素粒子の超弦模型における世代構造の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 安倍 博之
研究成果概要
超弦理論は重力を含めた素粒子の統一理論の有力候補であると考えられているが、これまでに観測されている素粒子の様々な性質をこれが完全に予言できるのかどうかは未だ分かっておらず、超弦理論の現象論的解析は重要な研究課題である。超弦理論の低エネルギー有効理論として素粒子標準理論のようなカイラルな理論が得られるためには、低エネルギーの4次元時空で左右対称性が破れなければならない。これまでに考えられてきた素粒子の超弦模型では、このような左右非対称性を生成するメカニズムとしてオービフォルドと呼ばれる射影空間がよく用いられている。本研究ではこのような空間がもつ非可換離散対称性を素粒子世代構造の観点から分類した。これは超弦理論や高次元時空の場の理論に基づく素粒子模型における世代構造を解析する際に有用であると考えられる。これらの成果は論文[1]にまとめ学術雑誌に掲載された。また、これとは別にII型超弦理論の低エネルギー有効理論として素粒子の標準理論を再現するような超弦模型の構築において、交差するDブレーン系とその双対である磁場をもつDブレーンの系が有望であると考えられているが、後者では素粒子の世代構造を決定する湯川結合の値が有効理論の枠内で精度よく計算可能であることが知られている。本研究では、磁場をもつ超対称非可換ゲージ理論を超空間で定式化することにより、磁場をもつDブレーン系の4次元有効理論を系統的に導出する方法を考案した。これにより既知の素粒子の世代構造を再現する磁場に対して未知の超対称粒子の世代構造を同定することができるため、超弦模型の検証に有用であると考えられる。これらの成果に関しては日本物理学会2010年秋季大会で研究協力者が発表した。