表題番号:2010B-179 日付:2011/03/13
研究課題冷却中性原子系を対象とする非平衡熱場の量子論の構築とその応用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 山中 由也
研究成果概要
 量子多体系の基礎理論である場の量子論に基づいて、非平衡過程を記述する熱場の量子論の構築することを目的に、近年実験的・理論的研究が盛んな冷却中性原子気体系を対象として研究を行っている。この冷却原子系では、様々な観測可能な非平衡過程が実現されているからである。熱場の量子論の方法論としては実時間正準場の理論形式であるThermo Field Dynamics (TFD)を用いる。
 研究成果として、冷却ボース中性原子気体系に対して、統一的観点から非平衡TFDの定式化を行った。具体的には、ボース・アインシュタイン凝縮体が存在しない場合、時間に依存しない凝縮体が存在する場合、最後に時間に依存する凝縮体が存在する場合、それぞれにループ計算結果に非平衡TFDにおける繰り込み条件を課すことで重要な結果を導いた。特に、時間に依存する凝縮体が存在する場合に、この系の時間発展を記述する3組の連立方程式、すなわち、運動学的方程式、秩序パラメータを記述する時間依存Gross-Pitaevskii方程式、励起状態を記述する時間依存Bogoliubov-de Gennes方程式を導出した。これらの方程式が単なる現象論的な組み合わせではなく、場の量子論に忠実な立場で自己無撞着に導出されていることが重要な点である。さらに得られた運動学的方程式を数値的に解き、凝縮体が安定な場合・不安定な場合における挙動を定性的に評価した。