表題番号:2010B-177 日付:2011/04/11
研究課題手術手技の工学的解明に基づく手術支援ロボットの知能構築と統合システム開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 山川 宏
研究成果概要
本提案では,肺の転移性がんに対する内視鏡手術をモデルケースとし,患者個人が持つ形状や物性に応じた手術ロボティックシステムの開発を目指した.システム開発にあたり,各研究者がこれまで十分な実績がある専門分野において研究を遂行し,各機関が繋がりを有した形で肺虚脱前後におけるがん位置同定システムの開発を実施した.
まず,小林・星らは,肺の詳細な力学モデルを構築するため,定量的なCT撮像を実施した.具体的には,肺の変形量が多い10~20[kPa]について,従来よりも撮像の刻み幅を小さくし連続的な画像データを取得した.これにより,従来不明であった10~20[kPa]における肺の変形形態について詳細なCTデータが取得され,より高精度の解析モデルの構築が可能となった.
さらに佐藤・中本らは,解析モデルを作成する際のレジストレーションに関する検討を行った.具体的には,従来,面等の一部形状が一致しても局所解のためにレジストレーション精度が向上できなかったが,新しくXiao Han の手法を適用することで,精度向上を図った.
最後に計算力学・シミュレーション技術を用いた手術手技の最適化手法に特化する山川・宮下らは,マルチスライスCTを用い,ブタ肺を用いた虚脱実験を実施し,シミュレーションによる解析結果との比較検証を行った.モデル構築にあたっては,25[kPa]印加時のCT画像を基に,3次元画像処理ソフトMimincによってCT画像からブタ肺の肺実質部分と気管支部分の必要領域を抽出した.各測定点の最終的な移動点について実測値と解析値を比較すると,固定点に近い点では誤差が20[mm]以下で小さいものの,固定点から遠い点では,70[mm]以上の誤差が生じ,大きな誤差が生じていたことが分かった.以上より,第一分岐気管支に近い点では今回の解析方法で肺構造の虚脱変形挙動の推定が有効であることが分かった.