表題番号:2010B-166 日付:2011/02/21
研究課題中性子を利用した低エネルギーキセノン反跳核の電離・発光過程の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 長谷部 信行
(連携研究者) 理工学総合研究センター 客員研究員 宮島 光弘
(連携研究者) 理工学術院 助手 草野 広樹
(連携研究者) 大学院理工学研究科 修士M2 石川 智裕
研究成果概要

本研究では,キセノン反跳核による電離・発光収量を測定するための装置の準備および較正を行った。
キセノンを用いた暗黒物質探索実験においてキセノン反跳核による信号は重要であり,本研究では,2.8気圧の気体キセノンを用いてキセノン反跳核の基礎物性値を得ることを目的としている。はじめに,キセノンガスを封入して中性子ビームを入射させるための検出器を設計・製作した。検出器内には,1インチ角の光電子増倍管を9個設置し,中性子により反跳核を発生させる領域と,発生した電子により比例蛍光を起こす領域を作り,適切な電場を印加できるようにした。次に,検出器内に設置する光電子増倍管の量子効率および利得の較正を,241Amからの5.49MeVのアルファ線を用いて行った。さらに,241Amからの59.5keVのガンマ線を用いて,検出器の光収率の較正を行った。また,散乱された中性子を検出するための液体シンチレータ(BC501A)について,発光波形による中性子・ガンマ線の弁別試験を行い,弁別条件を最適化した。
並行して,5.49MeVのα線による電離・発光収量の測定を,広範囲の密度(0.12-1.2 g/cm3)にわたり行った。低エネルギーキセノン反跳核と5.49MeVのα線では,電離密度が近い値をとることが指摘されており,反跳核の理解に役立つものと考えられる。無電場での発光量は,約0.6g/cm3までは密度に対して一次関数的に減少したが,それ以上では傾向の変化が見られた。高密度下でのシンチレーション過程を理解するため,シンチレーション光子数と電離電子数を同時測定し,それらの相関を0.12-1.0g/cm3の各密度で求めた。結果,電子イオン対の再結合過程における変化に起因する消光過程の存在が示唆された。