表題番号:2010B-165 日付:2012/04/14
研究課題ケミカルロボットの基礎研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 橋本 周司
(連携研究者) 理工学術院 助教 前田真吾
研究成果概要
外部環境に応答して膨潤・収縮変化する刺激応答性ゲルは, 基礎から応用まで数多くの研究が推進されている.例えば,マイクロ流体素子,細胞の接着制御,アクチュエータなどが挙げられる.一方,近年では電気的な刺激に応答する高分子が盛んに研究され,アクチュエータやデバイスへの応用展開が行われている.特にIPMC(Ionic Polymer Metal Composite)を用いた アクチュエータは小型デバイス化に成功し,既に商品化されている.しかしながら,刺激応答性高分子からなるアクチュエータを駆動するためには,温度や電場などの刺激を制御する何らかの外部装置や電気回路が必要となる.一方生命体は,生体内部で起こる多段かつ並行的な多数の生化学反応を巧みに利用することで,自律的な情報処理やアクチュエーションを行う非平衡開放系の分子システムである.もし,このような生命体の優れた分子システムを人工的に合成することが可能になれば,従来とは全く異なるロボットが実現される.そこで、振動反応に代表されるBZ反応とカップルした高分子ゲルアクチュエータやpH振動とカップルしたナノファイバー構造を有する高分子ゲルアクチュエータなどを実現した。特に、BZ反応とのカップリンにより振動的な反応によるゲルの周期的な収縮に基づいて尺取虫のようにゲルを補講させることに世界で初めて成功したばかりでなく、pH振動による運動生成の見込みも立ち、ケミカルロボット実現へ大きな前進を見た。今後は、これらの成果を統合する形で自己組織型のゲルロボットの完成を目指して研究を続けたいと考えている。そのための課題は、1.機械的な強度の確保、2.選択的な部品配置、3.部品間の接着制御などが挙げられるが、これらについても、各種ゲル素材の比較検討、部品形状制御、pHおよび温度による接着制御の予備的な研究を進めることができているため、科学研究費補助金の萌芽研究として申請を行った。