表題番号:2010B-160 日付:2011/03/30
研究課題大気微小粒子に含まれる二次生成有害有機化合物の探索と大気動態解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 名古屋 俊士
研究成果概要
大気微小粒子には様々な有害有機化合物が存在し,その一部は,大気中で二次的に生成することが知られているが,それらに関する知見はいまだ十分ではない。さらに,PM2.5にかかわる規制施行や二次生成粒子の増加から,大気微小粒子の有害性に対する二次生成有機化合物の寄与はこれまでより大きくなっていることが予想される。そこで本研究では,大気微小粒子にどのような有害有機化合物が存在するのか、また、それらの分析法の改良や大気中での動態解明を試みた。
まず、微小粒子に含まれる有害有機化合物の探索として、これまで高い有害性が指摘されていた多環芳香族炭化水素(PAHs)、およびそのニトロ体(ニトロPAHs)、オキシ体(オキシPAHs)の大気中濃度を測定し、その結果を解析することでそれらの動態を解明した。その結果、一部のオキシPAHsは大気中でのPAHsの酸化反応によって生成することを明らかにした。
また、これまで注目されてこなかった大気微小粒子中に存在する揮発性有機化合物(VOCs)に着目し、その同定・定量を行なった。できるだけ広範囲にわたる大気微小粒子中VOCsの探索を行うため、市販されている23種混合標準溶液を用いて同定・定量した。その結果、大気微小粒子中にはPAHsやニトロPAHs、オキシPAHsと同等またはそれ以上の濃度レベルでさまざまなVOCsが存在していることを明らかにした。さらに、その中には一般的に知られている炭化水素系、含酸素系のVOCsだけでなく、含臭素・塩素VOCsも多量に含まれていた。これらは、大気中での二次的な反応によって生成する可能性があり、今後の研究対象として注目すべき化合物であると予想される。また、それらのサンプリング時におけるアーティファクト(人為的要因による損失または濃度増加)の影響を評価し、その正確な測定には低流量かつ短時間の捕集が必要であることを明らかにした。