表題番号:2010B-159 日付:2011/02/27
研究課題日本における王陽明著作の出版と流布―和刻本を中心として
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 永冨 青地
研究成果概要
 従来の陽明学研究、特に日本陽明学の研究においては、各箇の陽明学者の思想が抽象的に論じられるのみであり、その基礎となるべき王陽明著作がどのように流入し、そして和刻本として如何に再生産されてきたかが論じられることはあまりにも少なかったといえよう。そのため、本研究においては以上のような抽象論にとどまりがちな従来の研究とは異なり、日本における陽明学の展開を具体的にみることに努めた。
 まず「閭東本『陽明先生文録』的価値」においては、早稲田大学図書館に所蔵されている王陽明の文集を紹介することにより、このような中国本土においてさえ伝来がまれな本が江戸時代においてすでに流入していたことを学会に示した。
 また、「内閣文庫蔵『東廓先生文集』について」も、江戸幕府が日本に将来した陽明学関係文献を学界に示したものである。
さらに、「陽明学研究者としての佐藤一斎―『伝習録欄外書』を中心に―」および「作為陽明学研究者的佐藤一斎―以『伝習録欄外書』為中心而論―」においては、佐藤一斎という江戸期における最大の陽明学研究者に焦点を当て、江戸期に流入した陽明学関係の文献がどのように日本人学者によって利用されたのかを具体的に示しておくことができた。
 なお、「中日陽明学の交流と非交流について」においては、このような中日陽明学の交流についてより巨視的に示しておいた。
 さらに日本陽明学研究のための基礎的作業として「日本陽明学研究論著目録(1998ー2008)」を作成したが、本稿は中国において一定の反響を得ていることが中国語の各種学術関係HPによって確認することができる。