表題番号:2010B-154 日付:2011/04/09
研究課題血液密封用メカニカルシールのしゅう動面間距離の測定方法の確立
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 富岡 淳
研究成果概要
定常流型人工心臓においては血液の軸シールが非常に重要である.そこで,これまで血液密封用メカニカルシールの摩擦と漏れに代表される潤滑特性に関して研究を行ってきた.このメカニカルシールの摩擦,漏れ特性は,しゅう動面間距離と密接に関係しており,メカニカルシールの潤滑特性を明らかにすると同時に,しゅう動面間距離を把握しておくことは重要といえる.しかし定常流型人工心臓における血液密封用メカニカルシールは非常に小さく,またサブマイクロメートル単位の高精度な測定が要求されるため,しゅう動面間距離の測定は困難であり現在まで行われてこなかった.そこで本研究では,これらの問題を解決し,血液密封用メカニカルシールのしゅう動面間距離の測定方法を確立することを目的とした.
本研究では,シールリングと一体となった回転軸における軸方向の変位を測定することにより,しゅう動面間距離を間接的に算出することを試みた.回転軸が静止しているとき,シールリングはシートリングに接しているが,回転軸を駆動させるとシールリングの位置は軸方向に移動し,二つの端面の間にすきまが生じる.したがって,このシールリングの変位を測定すれば,しゅう動面間距離に換算することができる.
測定の結果,以下の結論を得た.
(1)シールリングにおける軸方向の変位を測定することによって,しゅう動面間距離を間接的に算出することができた.
(2)しゅう動面におけるすべり速度が大きくなるとともに,しゅう動面間距離は増大した.
(3)しゅう動面における密封流体が高粘度であるほど,しゅう動面間距離は増大した.
(4)流体潤滑領域では,しゅう動面間距離が増大するとともに摩擦トルクおよび摩擦係数は大きくなる.無次元しゅう動面間距離と摩擦係数のあいだには,累乗関数的な関係がみられた.