表題番号:2010B-144 日付:2011/04/07
研究課題トリアルキルホスフィンオキシドのインターカレーションによる層状酸化物の酸性点評価
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 菅原 義之
研究成果概要
 積層しているナノシートからなる層状遷移金属酸化物は、層間のイオンをプロトンで交換する事により固体酸となる。プロトン交換された層状遷移金属酸化物は、ナノシートを剥離させて高表面積を持つ構造に変換することにより、固体酸触媒として応用できる。一方、これらの層状遷移金属酸化物は、層間にイオンや分子をインターカレートする事が可能である。従って、層間にプローブ分子を導入する事ができれば、剥離させる事なく、固体酸としての評価を簡単に行う事ができる。そこで本研究では、層状固体酸であるH型層状ペロブスカイト[HLaNb2O7・xH2O (HLaNb)、HCa2Nb3O10・xH2O (HCaNb)]の固体酸性を、トリアルキルホスフィンオキシド(TEPO)を層間に導入する事により評価した。H型層状ペロブスカイトへのインターカレーション反応はn-デコキシ基修飾体を中間体に用いて少量の水とともにTEPOと150˚Cで5日間反応させることにより進行させた。反応は層構造を保持したまま進行した。層間内におけるTEPOの存在状態は固体31P MAS NMR、IRから評価した。31P MAS NMRでは物理吸着したTEPO (50 ppm)からそれぞれ低磁場シフトした単一のシグナルを観測した(TEPO-HLaNb:94 ppm、TEPO-HCaNb: 93 ppm)。したがって、TEPOは酸点に配位しており、その配位環境はそれぞれ単一であると考えられる。IRスペクトルにおいても、ν(P=O)の吸収帯がTEPOの1157 cm-1からTEPO-HLaNbでは81 cm-1、TEPO-HCaNbでは71 cm-1低波数側へシフトしており、31P MAS NMR結果を支持していた。以上の結果から、TEPOはn-デコキシ基の加水分解と同時に生じた層表面のBrønsted酸点であるOH基に配位して存在していると考えられる。