表題番号:2010B-141 日付:2011/05/24
研究課題マクロおよびメゾな視点からの流体数学研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 柴田 良弘
研究成果概要
・マクロな視点からの流体数学研究
「安定性研究」
1) CREST 柴田チーム:柴田班(柴田,鈴木幸人,鈴木政尋)
まず騒音問題などの工学的問題の数学的基礎づけを与えるため,流体力学における流れの安定性理論の現状をレビューし,その問題点と課題を抽出した.本年度はEcole Polytechnique流体力学研究所のグループによる理論の問題点を詳細に検討した.またこれを基に
擬微分作用素,Fourier積分作用素による解の表示に基づく解析手法の検討に入った.
2) 圧縮性粘性流体の安定性研究の重要なステップとなる,線形化問題の解の減衰度に関する結果を得た.特に2次元外部領域における
解のLp-Lq評価を榎本裕子(芝浦工大)と共同で得た.
3) 層領域におけるNavier-Stokes 方程式の自由境界問題の線形化問題に関してその解表示に現れるロパチンシキィ行列式のゼロ点の
詳しい解析を行った.これは解の減衰評価を与える重要なステップである.
「混相流研究」
1) 混相流を表すNavier-Stokes 方程式の自由境界問題を線形化して得られる,Stokes 方程式の初期値・境界値問題のLp-Lq最大正則
性原理と対応するレゾルベント問題の一様レゾルベント評価を同時に示す,R-有界性に基づく理論を完成した.これは清水扇丈(静岡
大学)との共同研究である.
2) 上記線形化問題を一般領域で考えそのレゾルベント問題の一様評価を与えた.とくに圧力項が満たす弱ノイマン・デリクレ問題と
一様レゾルベント評価の同値性を示した.
・メゾな視点からの流体数学研究(CREST 柴田チーム:山本班(山本勝弘,吉村浩明,柳尾朋洋)と柴田,鈴木幸人)
流体運動をミクロからマクロまでの視点を通して理解するために,①分子動力学の手法による気泡の生成崩壊機構の理解,②粒子法に
よるナヴィエ・ストークス方程式のラグランジュ記述による解析法の開発,③ナヴィエ・ストークス方程式から導かれる級対称な気泡
ダイナミクスに関するレイリー・プリセット方程式による解析を行った.①については,分子動力学による数値解析プログラムを開発
し,レナードジョーンズ流体をもとに,気泡の生成崩壊過程を解析した.②の粒子法についても数値解析ツールを開発し自由表面問題
である水柱崩壊のベンチマークテストを行った.③に関しては,レイリー・プリセット方程式に高周波の外部励振を加え,ナノバブル
にみられるような微小気泡が安定に存在することを数値解析で確認することが出来た.